体内で骨が次々にでき、体の自由が奪われていく「進行性骨化性線維異形成症(Fibrodysplasis Ossificans Progressiva;FOP)」が先月、厚生労働省の難病指定を受けた。患者や支援者の努力の成果だが、医療関係者も含め、病気の理解はまだまだ。知らずに手術や検査などで筋肉を傷つけると、症状が急速に悪化するため、周知徹底が急務になっている。
 
石川県輪島市の北岡幸美さん(22)は、三歳の時、FOPを発症した。頭にこぶができ、やがては肩や首の関節に新しくできた骨が覆いかぶさって動かせなくなった。症状は次第に下半身に進み、動きにくくなり転ぶと、ケガをしたところから骨化が進行。今は股関節も固まり、歩行はつえが頼りだ。「右の股関節が固まるときは痛くて、寝たきりのまま何日も眠れず声も出なくて、涙が出るだけだった」

突然の痛み・腫れの後に、新しい骨が増える。顔に及ぶと、流動食しか取れなくなり、肋骨が動かなくなると、肺炎など呼吸器系の病気により死に至る場合が多い。

2〜5歳で発症することが多く、現在、把握されている患者は全国で30人あまり。昨年、原因となる遺伝子の変異が分かったが、発症への過程や治療方法は解明されていない。

北岡さんは年に1、2度大学病院に行くが、症状の進行の点検と、痛み止め薬や湿布を処方してもらう程度だ。FOPは、国による研究費・医療費助成の対象となる難病の基準を満たしながらも長く指定されず、北岡さんは2004年秋から署名活動を開始、厚生労働省にも3度出向き請願した。

請願に同行した埼玉医科大ゲノム医学研究センターの片桐岳信助教授は、数少ないFOPの研究者。「FOPを知らない医者ならば、できたコブを切って細胞の検査をするのは普通の発想。それが症状を悪化させる」と訴える。外傷が骨化を誘発してしまうためで、マッサージや歯の治療も注意が必要だ。「何をやってはいけないか、ガイドラインがなく、医師の経験則だけで決めている現状」という。

片桐助教授によると、世界的な調査でFOPと診断されるまでには平均約四年を要し、他の疾患と誤診されたケースが約九割。うち3割ががんと診断された。原因となる遺伝子変異が分かったため、今は数日で遺伝子診断ができる。

今回の認定でFOPは研究費の助成を受けられるようになったが、医療費の公費負担対象には入っていない。北岡さんは「今は身体障害者一級だけれど、骨化が進んでいない幼児期こそ、医療費を補助してほしい。各地の病院を回り、薬を試すためにも」と要望する。
(外傷で急速に症状悪化 FOP)


進行性骨化性線維異形成症とは、結合組織に発生する稀な疾患です。身体の矯正メカニズムが線維性組織に起こす難病で、骨組織に変化した硬化した筋肉、腱、靭帯に発生します。

多くの症例においてそれらは関節を定位置に永久的に固定されてしまいます。その増殖組織は外科手術で治療することはできません。そのような手術をしても次から次に手術しなければならない骨組織が増殖してしまうからです。

症状とは、
1)進行性骨化性線維異形成症を煩った子供は短く大きな爪先が特徴である。
2)進行性骨化性線維異形成症骨組織を構成するに至る最初の症状は10歳前に起こる。
3)腫瘍状の塊が一夜の内に発生することが多い。

とのこと。ガンと診断されることもある。この症状によって医師は生検を行う場合があるが、このことが結果として腫瘍の増殖を進行させる原因となることがあるそうです。

把握されている患者は全国で30人あまりとのことで、医師も認識が難しい状況ですので、生検を行ってしまうということでしょう。「原因となる遺伝子変異が分かったため、今は数日で遺伝子診断ができる」とのことなので、確定診断には遺伝子検査が行われるようになるのではないでしょうか。

早く研究が進み、診断・治療ガイドラインが作成され、患者さんの負担が少しでも軽減ができるようになれば、と思われます。

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