マラソンとヨットで地球を1周する「アースマラソン」に挑戦中のタレント、間寛平さん(60)が滞在先のトルコで診断された前立腺がん。男性特有のこの病気は他のがんより進行が緩やかだが、早期には自覚症状がなく見逃されやすい。食生活の変化などで日本でも患者が増加。専門家は「50歳を過ぎたら血液検査を」とアドバイスする。
厚生労働省人口動態統計によると、前立腺がんの死亡者数は昭和45年は883人だったが、平成20年には9989人と急増している。
癌研有明病院(東京都江東区)の福井巌・前立腺センター長兼泌尿器科部長は「診断例は死亡者数よりはるかに多い。医療機関は治療に追われ、パンク寸前」と増加傾向を指摘。要因として「高齢化、診断の普及のほか、食生活の肉食化がある」と説明する。
前立腺がんになるメカニズムは未解明だが、動物性脂肪を多く取るとリスクが上がることが分かっている。このため、野菜や魚が中心の日本食は予防につながる。このほか、家族に患者がいる場合、遺伝的にかかりやすいという。
早期はまったく症状がない。しかし、前立腺肥大症と合併すると、早期でも頻尿や尿が出にくいなどの症状が現れる。また、リンパ節や骨に転移すると、足のむくみや骨の痛み、下半身まひが生じるという。
診断方法として最も有効なのが、「血中PSA(前立腺特異抗原)測定」という血液検査。前立腺で作られるPSAは異常があると血液に入るため、その量を測定する。ただ、前立腺肥大症や前立腺炎でも数値が上がるため、がんを見分けるために数値の推移を観察する。また、医師が肛門から指で診断する直腸指診や、前立腺の組織を採取する生検などの方法でも診断する。
「血中PSA測定」で異常を疑うべき値は年齢などで異なるが、検査結果で注意の通知があれば泌尿器科の受診が望ましい。
前立腺がんは比較的進行が遅く、高齢者に多い。このため、がんが小さく生命に影響がなければ治療せず、PSA値を見ながら経過観察することも多い。
治療としては、がんが前立腺にとどまっている場合は、手術による前立腺摘出やがん細胞を殺す放射線療法が行われる。骨などに転移した場合は、がん細胞の増殖を止めるよう血液中の男性ホルモンを下げるホルモン治療を行う。さらに悪化すると、抗がん剤を使った化学療法も使われる。
PSA測定は職場などの定期健診の血液検査に含まれないケースもある。「希望する場合には健診時にオプションとして実費で申し込み、検査項目に加えては」と福井センター長。負担額は1,000~2,000円程度という。
福井センター長は「定期健診に含まれないと知らず、がんが進行してから見つかるケースも多い。将来の発がんの予測にもなるので、50歳になったら1度はPSA値を測っておくことが非常に重要」と強調する。
(寛平さんも…前立腺がん増加 食生活の肉食化、遺伝的側面も)
前立腺とは、男性のみに存在し、膀胱の前下部で直腸膨大部の前面に位置する栗の実様の器官です。尿道の起始部(前立腺部)を取り囲んで放射状に配列する分枝胞状管状腺の集合体で、線維性の皮膜に包まれています。
前立腺癌は、主に前立腺外腺(peripheral zone)より発生する腺癌です。臨床癌は50歳以上の男性に多く(典型的な高齢者癌)、高齢になるほど発生率が高いです。
前立腺癌のリスク因子として、
また、同じ人種であっても、居住地域によって大きな異なりがあります。例えば、日系アメリカ人の年齢調整罹患率は日本在住の日本人のそれの約5倍高いです。このことは生活環境が前立腺癌の顕性化に大きな影響を与えていることを推測させます。
前立腺特異抗原(prostate specific antigen;PSA)は、前立腺肥大症(BPH)でも上昇しますが、前立腺癌ではさらに上昇します。75〜95%の前立腺癌患者では異常高値(>4ng/ml)を示し、病勢,癌細胞の量をよく反映し、治療が奏功すると低下、前立腺全摘除術後は測定限界以下となります。
前立腺針生検では、確定診断ができ、経直腸超音波断層法ガイド下6ヶ所の生検を行います。血清PSA >10ng/mlでは癌発見率40%、血清PSA 4〜10ng/ml(グレーゾーン)では癌発見率10%であるといわれています。
直腸診で陽性の場合やTRUS陽性の場合、またはPSA値10.1ng/ml以上の場合には超音波ガイド下6か所系統的前立腺針生検を行います。PSAが10.0ng/ml以下の場合には年齢階層別PSA,、PSAD、 PSAvelocityを参考にして、前立腺針生検を行います。病理組織学的に確定診断された症例をもって前立腺癌とするので、針生検などの病理学的検索は重要です。
前立腺癌の治療としては、以下のようなものがあります。続きを読む
厚生労働省人口動態統計によると、前立腺がんの死亡者数は昭和45年は883人だったが、平成20年には9989人と急増している。
癌研有明病院(東京都江東区)の福井巌・前立腺センター長兼泌尿器科部長は「診断例は死亡者数よりはるかに多い。医療機関は治療に追われ、パンク寸前」と増加傾向を指摘。要因として「高齢化、診断の普及のほか、食生活の肉食化がある」と説明する。
前立腺がんになるメカニズムは未解明だが、動物性脂肪を多く取るとリスクが上がることが分かっている。このため、野菜や魚が中心の日本食は予防につながる。このほか、家族に患者がいる場合、遺伝的にかかりやすいという。
早期はまったく症状がない。しかし、前立腺肥大症と合併すると、早期でも頻尿や尿が出にくいなどの症状が現れる。また、リンパ節や骨に転移すると、足のむくみや骨の痛み、下半身まひが生じるという。
診断方法として最も有効なのが、「血中PSA(前立腺特異抗原)測定」という血液検査。前立腺で作られるPSAは異常があると血液に入るため、その量を測定する。ただ、前立腺肥大症や前立腺炎でも数値が上がるため、がんを見分けるために数値の推移を観察する。また、医師が肛門から指で診断する直腸指診や、前立腺の組織を採取する生検などの方法でも診断する。
「血中PSA測定」で異常を疑うべき値は年齢などで異なるが、検査結果で注意の通知があれば泌尿器科の受診が望ましい。
前立腺がんは比較的進行が遅く、高齢者に多い。このため、がんが小さく生命に影響がなければ治療せず、PSA値を見ながら経過観察することも多い。
治療としては、がんが前立腺にとどまっている場合は、手術による前立腺摘出やがん細胞を殺す放射線療法が行われる。骨などに転移した場合は、がん細胞の増殖を止めるよう血液中の男性ホルモンを下げるホルモン治療を行う。さらに悪化すると、抗がん剤を使った化学療法も使われる。
PSA測定は職場などの定期健診の血液検査に含まれないケースもある。「希望する場合には健診時にオプションとして実費で申し込み、検査項目に加えては」と福井センター長。負担額は1,000~2,000円程度という。
福井センター長は「定期健診に含まれないと知らず、がんが進行してから見つかるケースも多い。将来の発がんの予測にもなるので、50歳になったら1度はPSA値を測っておくことが非常に重要」と強調する。
(寛平さんも…前立腺がん増加 食生活の肉食化、遺伝的側面も)
前立腺癌とは
前立腺とは、男性のみに存在し、膀胱の前下部で直腸膨大部の前面に位置する栗の実様の器官です。尿道の起始部(前立腺部)を取り囲んで放射状に配列する分枝胞状管状腺の集合体で、線維性の皮膜に包まれています。
前立腺癌は、主に前立腺外腺(peripheral zone)より発生する腺癌です。臨床癌は50歳以上の男性に多く(典型的な高齢者癌)、高齢になるほど発生率が高いです。
前立腺癌のリスク因子として、
1)年齢があります。前立腺癌は典型的な高齢者癌であり、その罹患率は年齢に依存して高くなります。人種についてみると、年齢調整罹患率は黒人種>白人種>黄色人種の順であり、明らかに人種差があります。
2)人種
3)家族歴
4)動物性脂肪
また、同じ人種であっても、居住地域によって大きな異なりがあります。例えば、日系アメリカ人の年齢調整罹患率は日本在住の日本人のそれの約5倍高いです。このことは生活環境が前立腺癌の顕性化に大きな影響を与えていることを推測させます。
前立腺癌とPSA
前立腺特異抗原(prostate specific antigen;PSA)は、前立腺肥大症(BPH)でも上昇しますが、前立腺癌ではさらに上昇します。75〜95%の前立腺癌患者では異常高値(>4ng/ml)を示し、病勢,癌細胞の量をよく反映し、治療が奏功すると低下、前立腺全摘除術後は測定限界以下となります。
前立腺針生検では、確定診断ができ、経直腸超音波断層法ガイド下6ヶ所の生検を行います。血清PSA >10ng/mlでは癌発見率40%、血清PSA 4〜10ng/ml(グレーゾーン)では癌発見率10%であるといわれています。
直腸診で陽性の場合やTRUS陽性の場合、またはPSA値10.1ng/ml以上の場合には超音波ガイド下6か所系統的前立腺針生検を行います。PSAが10.0ng/ml以下の場合には年齢階層別PSA,、PSAD、 PSAvelocityを参考にして、前立腺針生検を行います。病理組織学的に確定診断された症例をもって前立腺癌とするので、針生検などの病理学的検索は重要です。
前立腺癌の治療
前立腺癌の治療としては、以下のようなものがあります。続きを読む