読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
尿に糖がたくさん出て、腎性糖尿と言われました。夏場になると、疲れやすくなります。どうしたらいいでしょうか。(80歳女性)

この相談に対して、菅原医院院長である菅原正弘先生は以下のようにお答えになっております。
健康な人は、空腹時の血糖値が110 mg/dl、食後の血糖値も140を超えることはまれです。

尿に糖が排せつされるのは通常、血糖値が170を超えた場合です。尿に糖が出たということは、血糖値が高い状態が続く糖尿病の可能性が高いと言えます。

ところが、血糖値が高くなくても、体質で尿に糖が出てしまう人がいます。これは糖尿病ではなく、腎性糖尿と言います。通常、症状はなく治療は行いません。

ただ、尿に含まれる糖が多い場合、尿の量が増え、脱水によるのどの渇きや倦怠感などの症状がみられることがあります。

また、「ファンコニ症候群」という病気の可能性もあります。尿に含まれる栄養分の再吸収などをする腎臓の「尿細管」が異常を起こし、糖だけでなくアミノ酸や尿酸、カリウム、リンなどが取り込まれず、手足の筋肉痛や骨が弱くなる「骨軟化症」も起こします。

ファンコニ症候群は、抗がん剤などの薬物や、口や目がかわく「シェーグレン症候群」、リンパ球の一部の細胞ががん化する「多発性骨髄腫」といった病気が引き金になって起こります。


腎性糖尿とは


腎性糖尿とは、近位尿細管におけるブドウ糖再吸収機構の異常により、血糖値が正常範囲であっても尿糖を認める先天性疾患をいいます。簡単に言ってしまえば、血糖値が高くなくても、体質で尿に糖が出てしまうといった疾患です。

病態としては、糸球体で濾過されたブドウ糖は、近位尿細管腔から担体によってNaとともに細胞内に輸送され、健常者では100%再吸収されます。この担体に異常があって、TmGが低下していて、糖再吸収能が減少するため正常血糖値でも尿に糖を認めます。

腎性糖尿の診断


腎性糖尿は、自覚症状を欠きます。TmGの低下の程度によって、空腹時でも尿糖が強く出る場合と、経口ブドウ糖負荷試験の際、血糖値と尿糖値のアンバランスから、腎性糖尿と診断されるときがあります。この際、血糖および血漿インスリンの反応は正常です。

検査としては、まず血糖値正常および検尿にて尿糖陽性が所見として重要です。

血中ブドウ糖は近位尿細管でほとんどが再吸収され、残りが遠位尿細管で再吸収されますが、健常人でも2〜20mg/dLの微量な尿糖は検出されます。尿糖は尿細管の再吸収の極量(300 mg/分)を上回って血糖が上昇した場合や、血糖が正常でも腎の糖排出閾(180 mg/dL程度)が低下した場合にみられます。

上記のように、鑑別疾患としてはFanconi(ファンコーニ)症候群があります。Fanconi(ファンコーニ)症候群とは、近位尿細管の物質輸送系の異常により、本来再吸収されるべきものが再吸収できず、糖、アミノ酸、リン酸、重炭酸イオンが尿中に喪失されることによって起こる症候群を指します。

乳幼児を中心に小児に発症するタイプと、成人発症タイプとに分けられます。成人では、特発性よりも重金属、薬剤によるもの、Wilson(ウィルソン)病などの続発性のものが多いです。

近位尿細管の輸送系が全般的に障害されるため、糖、アミノ酸など近位尿細管で100%吸収されるはずのものが再吸収不全となります。HCO3も再吸収極量(TmHCO3)が落ちるため血中HCO3濃度が低下し、しばしば尿細管性アシドーシス(II型RTA)がみられます。リン酸の再吸収も低下してリン酸尿を呈し、骨病変を起こすこともあります。

検査所見としては、糖尿、汎アミノ酸尿、高リン酸尿、尿細管性蛋白尿、HCO3尿、低張多尿を示します。血液検査ではK、Ca、P、HCO3の低下、アニオンギャップ正常の代謝性アシドーシスなどがみられます。

このようにII型RTAに尿糖、汎アミノ酸尿を伴います。グルコース再吸収極量(TmG)、TmHCO3を測定すればさらに確実です。

腎性糖尿の治療


上記のケースでは、治療については以下のようになっております。続きを読む