各論III-4「視機能異常・視神経疾患」
動眼神経麻痺ではArgyll Robertson瞳孔がみられる。

(答え)×
(解説)
 アーガイル ロバートソン瞳孔とは、Argyll Robertsonによって神経梅毒に特異な瞳孔所見として1869年に発表された(過去においてはArgyll Robertson瞳孔が神経梅毒に高頻度に出現したが、近年は、糖尿病,多発性硬化症,脳炎,中枢神経系の変性疾患,アルコール中毒など、非梅毒で本瞳孔を呈する頻度が高まっている)。詳しい病態は不明だが、脊髄癆や中脳の障害で出現する
その主徴は、1)直接および間接対光反応の欠如,2)迅速な輻湊反応(近見反応は正常),3)縮瞳である(対抗反射は消失するが、輻湊反射は保たれる)。症状は一般に両眼性であるが瞳孔不同や脱円をみることが多い。

 動眼神経(第3脳神経)の完全麻痺では、眼球の上転,下転,内転ができなくなり、眼瞼下垂を生じ、眼球は外下斜する。また瞳孔の散大,対光反応,輻湊反応の消失,調節麻痺が出現する。これらの動眼神経麻痺の症状は、神経走行中の障害の部位によって特徴がある。病変が全動眼神経核を侵すことはまれであるが、この部が障害されると、病変側の眼球運動制限が出現し、眼球上転障害は反対側にも出現する。これは上直筋核は交叉性支配であるが、反対側からの上直筋支配神経線維が病変部位を通り、中脳から脳外へ走行するため病変側の上転も侵される。
 また上眼瞼挙筋支配核は両側支配であるため眼瞼下垂は両側性に出現する。赤核の障害では同側の動眼神経麻痺に反対側の不随意運動や筋緊張亢進を合併するベネディクト症候群が起こる。
 また病巣が大脳脚にあると同側の動眼神経麻痺と反対側の半身運動麻痺を起こすウェーバー症候群(ウェーバー麻痺Weber's paralysis)が出現する。
 このような脳幹内病変は、血管性,腫瘍,脱髄などが病因である。動眼神経が脳幹を出て海綿静脈洞内に至る間での病変は、腫瘍,髄膜炎,動脈瘤,糖尿病,動脈硬化症,外傷などによることが多い。
 治療としては、病因に対するものが重要である。糖尿病性のものは一般に予後がよい。発病後6ヵ月以上経て症状が固定した斜視には、斜視手術や自己眼筋移植術などが行われる。

[注]これは、医学評論社で毎平日更新中の一問一答を解説していく…という、不毛なことをやるコーナーです。

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