病腎移植問題で、日本移植学会(田中紘一理事長)が米国移植学会に対し、宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長らが5月に米学会で行う予定だった論文発表について再考を求める内容の書簡を送っていたことが分かった。これを受けて米移植学会は論文発表を見送ることを決め、関係者に通知した。

日本の学会が出した書簡は、「万波医師の論文発表についての要請」の表題で、一連の病腎移植が倫理審査を経ずに行われるなど問題点が多く、現在日本で調査が進められている経緯などを説明した内容。「論文は米移植学会にふさわしくないと考えている」と結んでいる。田中理事長名で13日付で送付された。

これを受けて、米学会側から万波医師の関係者に23日深夜(日本時間)、「時期尚早と判断した」などと論文採用の取り消しが伝えられた。

論文は、病腎移植を受けた患者の生存率などを検証し、有効性を訴える内容。2月末に米国から採用が伝えられ、5月に米サンフランシスコで開かれる米移植学会と米移植外科学会の合同総会で万波医師らが発表することになっていた。

 米国に要請書を出した理由について、日本移植学会の関係者は、一連の移植が
1)倫理審査を経ずに行われ、患者への説明・同意の手続きの文書化もほとんどされていない。
2)日本で社会問題化していることを米国側に知らせる義務があると判断したと説明している。

同学会は、「瀬戸内グループ」の別の医師が米国の医学誌に投稿した病腎移植に関する論文についても、医学誌の編集部に経緯説明の書面を送る方針という。
(米移植学会、日本側要請で万波医師発表を中止)


どうも日本移植学会が送った要請書の内容は、解せません。

1)倫理審査を経ずに行われ、患者への説明・同意の手続きの文書化もほとんどされていない。
→このことと、論文発表とにどう関わってくるのでしょうか?論文が多く個人情報を含んでいて垂れ流していたり、患者との係争中だったりするのならいざしらず、どうしてこれが論文発表の差し止めの根拠になるのかわからない。

2)日本で社会問題化していることを米国側に知らせる義務があると判断したと説明している。
→これだけこの問題がクローズアップされており、何度も米国移植学会が話し合い申し入れをしてきたにも関わらず、それを日本の学会側が拒否していたという経緯があるにもかかわらず、米国側がそれを知らないわけがないでしょう。

これらの要旨からすると、単なる"圧力"をかけにいっているようにしか思えない。少なくとも、こうした言論封鎖としか思えないようなやり口は納得いかない。

今後、アメリカ移植学会による「病腎移植シンポジウム」が4月中に独自開催されるようですが、果たしてその流れはどうなるのでしょうか。

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