
ミシガン州のメアリーズビル住宅公社では4月1日、低所得者向けのアパート(132世帯)を全館禁煙とした。現在入居している愛煙家については2008年10月まで喫煙が認められる。「受動喫煙の害をなくすためだ」と同公社のウェイン・パイデンさんは話す。
禁煙を決定した公社は受動喫煙のほか、たばこによる火災防止、退去時のクリーニング費用の低減を理由に挙げている。禁煙促進団体のジム・バーグマンさんは「人種や性別、宗教と違い、喫煙は基本的人権にあたらない」という。全国住宅公社連合のビンセント・カリーさんは「公営なのだから規則に従わなければならない」と話す。
モンタナ州のヘレナ住宅公社では7月1日から、現在の入居者も含め366世帯を禁煙の対象とする。入居者の1人シェリ・デメロさんは1日1箱半を吸うが、「4歳の子供もおり、喫煙のためだけに外出できない」とこぼす。
公営住宅に関する民間団体の弁護士キャサリン・ビショップさんは「公営住宅に住まう人は低所得者が多く、喫煙するからといって、民間を借りることはできない」と公社の措置を批判している。
(自宅でもダメ! 米、公営住宅も次々「禁煙」)
喫煙しない自分にとっては、「良い流れだな」と思いますが、喫煙者には堪らない処置なんでしょうね。ですが、公社側としては、1)受動喫煙の防止、2)たばこによる火災防止、3)退去時のクリーニング費用の低減 という理由をあげ、さらに「喫煙は基本的人権にあたらない」と喫煙者の都合はまったく取り合わない構えのようです。
そもそも、喫煙はなぜ害とされているかというと、
1)依存症
動物実験などの知見から、ニコチンは明らかな依存性を持つことが知られています。ニコチンは、神経伝達物質であるアセチルコリンに分子構造が類似し、ニコチン性アセチルコリン受容体(レセプターとも)に作用することで、中枢神経のドパミン神経系、特に脳内報酬系を活性化します。
そのため、摂取後に一時的に快の感覚や覚醒作用を得られるそうです。ちなみに、このような報酬系を介した薬理作用は、覚醒剤など依存性を有する他の薬物と共通です。
ニコチン摂取を続けると、ニコチン受容体がダウンレギュレーション(受容体の数が減ること)を起こし、ニコチンを外部から摂取しないと神経伝達が低下した状態となります。これがニコチン離脱症状であり、自覚的にはニコチンへの渇望が生じます。喫煙に対して依存性を示す者は「喫煙でリラックスできる」と表現するが、実際は離脱症状を喫煙によって一時的に緩和しているに過ぎません。
2)発ガン性
喫煙によって罹患率が増加することが示されている癌として、肺がん、喉頭がん、咽頭がん、食道がん、膀胱がんなどがあります。
ヒトの身体を構成する細胞は、分裂・増殖を繰り返しています。がんは、細胞分裂の際、特定の遺伝子のコピーにミスが起こることで生じます。喫煙の際には、煙によって気道や肺の炎症・破壊が生じ、修復のために細胞の増殖が促進されます。また、タバコの煙に含まれる物質は遺伝子毒性を持つことが実験的に示されています。このように、細胞分裂が活発に行われ、しかも遺伝子のコピーミスが生じやすい環境におかれることで癌が発生しやすくなると考えられています。
3)呼吸器疾患・循環器疾患
喫煙により慢性気管支炎、肺気腫(これらの2つの疾患のことをCOPDとも言う)などが生じます。軽度のものを含めると、習慣的喫煙者のほぼ100%に気腫性変化が生じます。
タバコの煙に含まれる活性酸素は、血管内皮細胞を障害することが知られています。そのため、動脈硬化が促進され、狭心症、心筋梗塞、脳血栓 、脳塞栓、動脈硬化、動脈瘤、閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)などのリスクが増加することが統計的に示されています。
他にも、妊娠中の影響や免疫低下・感染症、歯周病などのリスクをあげます。
是非とも、喫煙者の方々は、周囲の人々のことも考えた上で、一度禁煙を試されてはいかがでしょうか。
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