ニューロンの活動はすべてイオンの流れ(ナトリウムやカルシウムイオンなど)によるものである。脳の活動はすべてイオンの流れであると言っても過言ではない。今回の研究技術は、遺伝子を外部から導入することによって、このイオンの流れを制御することができるチャネルやポンプをニューロンに人工的に埋め込むというものだ。
導入されたチャネルやポンプは、レーザー光を当てることによって自在に活性を操ることができる。実験者としては、祭りの射的ゲームのように、ニューロンをレーザー光で狙い撃ちして、脳の活動を自由に操ることが可能となるのだ。
運動したり、考えたりすることができる脳の機能は、すべてニューロンの活動によるものである。この技術によって、特定のニューロンのみを選択的に制御できれば、思考や行動を、外部から自在に操作することができるだろう。
実際に、この技術を開発した研究グループは、少なくとも線虫の水泳行動などは、光を当てることによって自在に制御できることを実証している。より大きな動物を用いても同様の結果が実現できる可能性が高い。
遺伝子操作というと危険なイメージがつきものだが、ここでいう遺伝子操作とは、クローン動物などとはまったく異なり、あくまでも脳の一部の活動を補うというものなので、機械や薬による治療・制御と本質的には変わらないものである。
しっかりとした安全性の検証はこれからの研究次第だが、これがヒトにも応用できるとすれば、異常な興奮が脳で起こってしまう「てんかん」の治療や、体が自由に動かせない人への介護システム(脳とロボットの連動など)の開発につながり、これまでにない新しい医療が実現される可能性もある。今後の研究の進展に期待がもてる。
(光で脳を操る技術登場 「てんかん」治療などに期待)
てんかんの定義とは、「さまざまな原因で起こる慢性の脳疾患で、大脳神経細胞の過剰な放電からくる繰り返す発作(てんかん発作)を主な徴候とし、多種多様な臨床及び検査所見を伴う」というもの。
脳神経細胞はお互いに電気的信号によって通信していますが、一群の神経細胞から異常な電気信号が発射されるとてんかん発作が起ります。
てんかんには3種類あります。
1)症候性てんかん:てんかんで原因が明確な場合
2)潜因性てんかん:原因が推定される場合
3)特発性てんかん:原因不明の場合で、最も頻度が多い
てんかん発作は年齢、性、人種にかかわらず外傷、中毒、脳卒中、脳腫瘍、発生異常など種々の原因でも起ります。
治療としては、抗てんかん薬による内科的治療と外科的治療の2つがあり、通常、内科的に薬物投与します。大発作には、デパケン、アレビアチン、テグレトール、エクセグラン、マイスタチン、小発作には、ザロンチン、ミノ・アレビアチン、デパケン、ミオクローヌス発作には、リボトリル、デパケン、精神運動発作には、テグレトール、アレビアチン、デパケン、エクセグラン、マイスタチンなどを投与します。
現在でも、偏見などがあり、苦しんでいらっしゃる患者さんも多いと聞きます。
上記のような外科的治療により、発作の恐怖から自由になれるようになれば、と期待しております。