
目に入った光は、網膜の視細胞で感知され、視神経を通じて視覚情報として脳に伝えられる。網膜は一度傷つくと修復が難しく、視細胞が徐々に失われる網膜色素変性という病気は日本に約3万人の患者がいるが、有効な治療法はないという。
グループは、マウスやサルの網膜を取り出し、「Wnt3a」というたんぱく質などを投与することで、網膜のグリア細胞を盛んに分裂させることに成功した。さらに、視細胞が作られる際に必要なレチノイン酸を加え、視細胞になることを確認した。
高橋政代チームリーダー(眼科学)は「マウスやサルでも自然な網膜の再生はごくわずか。研究を治療に生かすには、人でも網膜再生が起きるか調べ、新しくできた視細胞が網膜の神経回路に組み込まれるか確認しないといけない」と、今後の課題を説明している。
(傷ついた網膜、薬で視細胞再生促すことに成功)
この技術が臨床応用されれば、網膜や視神経が傷ついた糖尿病性網膜症や緑内障が改善できるのではないでしょうか。
ちなみに、今回の研究で投与された「Wnt3a」のWnt遺伝子群は発生のさまざまな局面で時間的、位置的に特異的な発現を示し、形態形成の誘導因子、細胞の極性決定因子、増殖分化の調節因子として機能している、とのこと。
Wntという名称は、ショウジョウバエのセグメントポラリティ遺伝子の1つwinglessと、マウス乳癌で同定された遺伝子int-1とに由来するそうです。NusseとVarmusはマウス乳癌ウイルス(MMTV)が染色体に組み込まれることによって活性化されるプロトオンコジーンとしてint-1を発見した、とのこと。
他臓器の再生医療や癌抑制などの研究でもでてきそうですね。
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