C型肝炎ウイルス(HCV)が引き起こした慢性肝炎が肝臓がんに進行する仕組みを、人やマウスの細胞を用いた実験で京都大の丸沢宏之助教(消化器内科)らのグループが解明した。HCVに感染することにより、本来は免疫細胞にしか存在しない遺伝子編集酵素の一種「AID」が肝細胞に発現し、がんにかかわる遺伝子異常を継続的に引き起こすことを突き止めた。14日始まる米国がん学会年次総会で発表する。

国内のHCV感染者は約200万人といわれる。HCVが引き起こす慢性肝炎は肝硬変を経て、肝がんに進行することが分かっており、肝がんの約4分の3はHCV感染が原因。HCVが未発見で対策が不十分だった時代に感染した人が、10〜40年後に発がんする例が多い。グループが行った培養細胞の実験などから、HCVに感染すると肝細胞内に発現したAIDにより、がんに関連するさまざまな遺伝子に変異が生じることが分かった。
(肝臓がん:進行の仕組み解明−−京大助教らグループ)


京都大大学院の丸沢宏之助手らのグループは、ヘリコバクター・ピロリ菌が胃がんを発症させる仕組みを、人やマウスの細胞実験などで明らかにしています。

そのメカニズムといえば、なんとピロリ菌が、胃粘膜細胞をがん化するために、通常は免疫細胞にしかない「AID」と呼ばれる酵素を利用していたことを突き止めたそうです。

HCVによる慢性肝炎から肝癌へと至るのにも、ヘリコバクター・ピロリ菌が胃がんを発症させる仕組みにも「AID」が関与しているとのこと。今後、「AID」の研究が進み、他臓器の癌にも関係しているといったことや、治療への足がかりになるようなことが期待されます。

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