
それによると、胎盤が子宮から早くはがれてしまい、胎児に危険が大きい「胎盤早期はく離」は自然妊娠の約5倍。酒見医師は「体外受精をするカップルに、こうしたリスクがあることを知らせるべきだ。医師も経過を慎重に観察する必要がある」としている。
調査は、同病院で平成15年8月から18年3月に出産した、自然妊娠の2454人(妊婦は平均約33歳)と、体外受精による妊娠195人(同約38歳)が対象。同病院での体外受精は40人で、残りは外部での実施だった。
胎盤早期はく離は自然妊娠の0.53%に対し体外受精では2.56%。通常は子宮の上部にある胎盤が下の方にできてしまう「前置胎盤」は、同0.57%に対し5.64%。へその緒が胎盤ではなく、卵膜につく「臍帯卵膜付着」という異常は、0.53%に対し5.67%だった。
体外受精の妊婦の方が高齢のため、その影響もあり得るが、年齢差を補正して分析しても異常は体外受精の方が多かったという。
妊娠異常をめぐっては米疾病対策センターが今年3月、約16万人の調査で、体外受精では胎盤早期はく離の割合が自然妊娠の約4倍との結果を発表。酒見医師は「日本もほぼ同じ傾向であることが今回示された」と話している。
(体外受精はリスク大 胎盤早期はく離、自然妊娠の5倍)
03年8月〜06年7月に出産した女性2,844人、このうち自然に妊娠した人が2,454人、過去に不妊外来へ行った経験がある人が195人、体外受精を受けた人が195人について研究が行われました。
年齢や妊娠経験の違いを考慮したうえで、
1)胎盤が子宮口を覆う「前置胎盤」
2)胎盤が出産前に突然はがれる「常位胎盤早期剥離」
3)さい帯の付着位置がずれる「卵膜付着」
になる可能性を比較。体外受精を受けた人は、さい帯の卵膜付着が起こる確率が自然妊娠の人の9倍、胎盤の早期はく離は5.5倍、前置胎盤は5.4倍だった。一方、不妊外来へ行った経験があるだけの人は自然妊娠と差がなかった、とのこと。
他にも、リスクとしては、体外受精は8〜10個の成熟卵(胚を何個移植するかは医師の判断)を治療を受ける女性から採取後に体外で受精させ、さらに培養した胚を子宮に移植するため、多胎も起きやすい。結果、未熟児となってしまう、といったケースもあるそうです。
妊娠・出産は多くの危険を伴い、さらに体外受精ではその確率が上がってしまう…こういったリスクに関して、不妊治療を受ける際はしっかりと認識しなくてはならないようです。
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