2007年04月18日放送の「ザ!世界仰天ニュース」で取り上げられていた話題です。

今から30年ほど前、アンジェラが生まれて4か月の頃、目にある変化が起った。病院で検査をすると、アンジェラは網膜に出来る目のガン、網膜芽細胞腫に侵されていた。

網膜芽細胞腫とは目の中にできるガン。眼球の内側にある網膜にガン細胞が発症し、真ん中の透明な部分が白くにごってしまう。基本的に幼児期に発症するもので、そのまま失明・摘出することも。幼いアンジェラに抗ガン剤療法が施され、ガンは治り外見上の支障はなかったものの、アンジェラの右目の視力は治らなかった。それでも、アンジェラはハンデを克服、結婚し一人息子のキエラン君も授かり、幸せな生活を送っていた。だが、そんな幸せも長くは続かなかった。

18か月経ったキエランの黒目が明らかに白く濁っていた。これは幼いアンジェラを苦しめた網膜芽細胞腫。そして、医師からアンジェラのガン細胞が遺伝したと告げられ、絶望するアンジェラ。キエランも過酷な抗ガン剤療法を強いられた。辛い化学療法でキエランの視力は回復した。キエランは成長するにつれ、兄弟を欲しがるようになる。アンジェラ夫婦はキエランに兄弟を持たしてやりたいと思い、どうすれば、子供にガン細胞を遺伝させないで済むか、自分たちで病気について調べた。そして夫婦は着床前遺伝子診断の第一人者、ポール・サーハル医師を紹介されることに。しかし、イギリス不妊治療局は、アンジュラの着床前遺伝子診断の適用を認めてはいなかったため、子供は諦めるしかなかった。

2年の月日が流れた、2005年8月、事態が変わった。それは網膜芽細胞腫でも、着床前遺伝子診断で受胎する事が認められたのだ。そして2006年5月、アンジェラの着床前遺伝子診断手術が行われた。


着床前診断(受精卵診断)は受精卵が子宮に着床して妊娠が成立する前に、受精卵の染色体や遺伝子に異常がないかどうかを調べる医療技術です。

この診断を受けた最初の赤ちゃんの誕生が1990年に報告され、以降世界中で約10,000人の元気な赤ちゃんが着床前診断を受けて生まれているそうです。

自然の妊娠では体の中で受精した受精卵の内、25〜30%しか赤ちゃんとして生まれてこないことが知られています。これは、受精卵の多くに染色体異常があるため、着床しなかったり、着床しても流産や死産を起こしてしまったりする事が大きな原因の一つです。

着床前診断手術では、こうした染色体異常をもつ受精卵は母体に移さず、"正常"な受精卵のみを移す、ということだそうです。

もちろん、こうした行為は優生学的で、倫理的に大きな問題を孕んでいることは確かですが、今回のエピソードで「子供に病気が遺伝するかも知れない」ということで悩んでいるというご両親の辛さは計り知れない悲しみだと思い知らされました。日本産科婦人科学会では、個別審査など厳しい基準を設けているようです。それだけ大きな問題だということは確かです。

ですが、この技術で「救われた」というご両親もいらっしゃるのではないでしょうか。一定の理由(致死的であったり、重病な遺伝子疾患など)に対しては、こうした治療の存在もあってしかるべきではないか、と思われます。

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