厚生労働省は23日、病気腎移植の原則禁止を盛り込んだ臓器移植法運用指針の改定案を公表した。

宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師らによる病気腎移植を契機にまとめられた関連4学会の声明を受け、改定案には「現時点では医学的妥当性がない」と明記した。生体移植全般についても、提供者と患者の間で金銭の授受がないことを移植施設の倫理委員会で確認することなどを求めている。この夏にも運用を始め、病気腎移植と臓器売買事件の再発に一定の歯止めをかけたい考えだ。

公表された改定指針案ではまず、健常な提供者にメスを入れる生体移植を「やむを得ない場合に例外として実施する」と規定。家族や移植関係者以外による提供者の意思確認と、医師の十分な説明と書面による同意を必要とした。

提供者が患者の親族の場合は、運転免許証などの公的証明書で本人であることを確認し、親族以外の第三者から臓器が提供される場合は、移植病院の倫理委員会の承認を求めた。

その上で、生体移植の一つとして治療の目的で行われる病気腎移植は、「医学的な妥当性はない」と否定した。ただし、将来の臨床応用を視野に入れた研究については禁止せず、その際は、国の臨床研究倫理指針に沿って移植施設の倫理委の審査を求めた。

禁止規定から研究目的の病気腎移植が除外された点について、同日開かれた国の厚生科学審議会臓器移植委員会では、「病気腎移植の容認と取られかねない」などと異論が出た。厚労省臓器移植対策室の原口真室長は「委員会で指摘を受けた部分について文言を修正し、国民に公表したい」と話している。
(病気腎移植、国も原則禁止…厚労省が改定案を公表)


万波病腎移植に関しては、市立宇和島病院が設置した専門委員会が、同病院での移植25件と摘出20件の大半を「医学的に認められない」と大筋で合意していた。さらに、アメリカでの論文発表も日本からの"警告"で中止された。

このまま、この問題が封殺されてしまうのではないか、と危惧される。
十分な論議を尽くし、病気腎移植が許容・容認されるような条件をはじめから除外してしまって良いのか、ということに関しても議論がなされるべきでないか、と思われる。

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