自治医大付属病院(栃木県下野市)は7日、パーキンソン病患者に国内で初めて遺伝子治療を行ったと発表した。病気は脳内の神経伝達物質ドーパミンの減少で発病する。治療ではドーパミンの生成を促す酵素の遺伝子をウイルスベクター(運び屋)に組み込み、脳内の線条体に注入した。薬物への依存度や副作用が低い治療が期待できるという。

中野今治教授(神経内科)らによると、発病後約11年が経過した50代の男性患者に、「L−アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)」の遺伝子を注入した。この治療法は米国で6例実施され、重大な副作用は確認されていないという。同病院は今後、6カ月かけて安全性と効果を検証する。
(パーキンソン病:自治医大病院、初の遺伝子治療 脳内物質生成へ)


パーキンソン病は、脳内のドーパミン不足とアセチルコリンの相対的増加とを病態とし、錐体外路系徴候を示す病気の一つです。ドーパミンを産生する黒質の変性が病態として考えられています。

症状としては、
1)静止時振戦:安静よりも、むしろ精神的な緊張で増強する。動かそうとすると、少なくとも一瞬は止まる。書字困難もみられる。
2)筋強剛(筋固縮)
3)無動(仮面様顔貌、すくみ足)(akinesia)
4)姿勢保持反射障害(postural instability)(前傾姿勢、小刻み歩行、加速歩行)
の4つを主徴とします。初めは、たいてい左右差がみられる。

治療としては、ドーパミン前駆物質 (L-Dopa)、ドーパミン受容体作動薬、ドーパミン放出薬(アマンタジン)、MAO-B阻害薬 (FP)、抗コリン剤などを用いますが、L-Dopaなどは、当初は劇的に効きますが、L-Dopaをドパミンに変える神経細胞自体が減少していくため数年で効かなくなること(Wearing off)や、早期投与が神経細胞減少を加速してしまうということや、on/off現象と呼ばれるL-Dopa服薬に関係無く、症状が軽快したり(on)悪くなったり(off)することなどが起こります。

故に、薬以外の治療法が開発され、しかも対症療法ではない治療法ともなれば、非常に期待されます。

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