
長男はいまは戸籍がない状態。「長かったけれど、ようやくふたりの子と認められるんですね」
生まれたのは昨年12月30日。前の夫との離婚から292日目だった。「300日規定は知っていたが、関係ないと思っていた」。出産予定日は今年2月19日で、離婚から340日以上となるため、問題なく夫の籍に入る計算だったからだ。
ところが、出産を2カ月後に控えた検診で「胎内に羊水がほとんどない。子の命が危ない」と告げられた。緊急入院し、帝王切開で出産。1194グラムの未熟児で生まれた長男は2カ月間、病院を出られなかった。
都内の別の区役所で母子手帳を見せて事情を説明したが、区役所側は「規定に従うしかない」。現在の夫を父とする出生届を受け付けてくれなかった。「息子の体のこと、将来のこと、不安ばかり募った」。戸籍がないと乳幼児医療補助も受けられず、入院費70万円は自分で払った。
いま、長男はすくすくと育ち、体重も6キロに。首もすわり、声を上げて笑うようになった。「早く家族3人が並んだ戸籍を見たい」
規定の見直しを求める市民団体の運動にかかわるなかで、家庭内暴力のために前の夫に会うのも怖い人や、相手の居場所が分からず離婚手続きができない人がいることを知った。多くが「離婚前の妊娠」のため、今回の通達の対象にはならない。
(「ようやくふたりの子」 医師の証明書を添え、出生届)
離婚後300日規定とは、民法772条2項で「婚姻の成立の日から200日を経過した後または婚姻の解消もしくは取り消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」と規定されているものです。
出生が離婚後300日以内だった場合は前夫の子として届けなければならないわけです。実際の父親の子として戸籍に登録するには裁判などの手続きが必要で、見直しを求める声が高まっています。
今回のケースでは、まさにこの規定が問題となってしまったわけです。
戸籍がないと、乳幼児医療補助を受けられない。すると、子供の将来に不安な上、経済的にも大きな問題となってくる。
生後5カ月で、ようやく出生届が受理されたとのこと。
他の家庭でも、こうした問題が起こっているのかも知れないと考えると、このような規定が、出生届の申請をフレキシブルに取り扱えるように改正できれば、と思われます。
【関連記事】
「代理母問題」向井亜紀夫妻の出生届、不受理が確定
妊娠していると気づかずに、判明後2日で出産した女性