和歌山県立医大付属病院紀北分院(和歌山県かつらぎ町妙寺)で50代の男性医師が患者の延命措置を中止するために人工呼吸器を外して死亡させたとされる事件で、県警妙寺署がこの医師を殺人容疑で和歌山地検に書類送検した際、「悪質性は低い」との情状意見書を付けていたことが23日、分かった。起訴は見送られる可能性が高くなった。

調べでは、医師は昨年2月、脳内出血で運ばれてきた80代女性の緊急手術後に呼吸器を装着。女性は脳死状態になったが、呼吸器を外して死亡(心停止)させた疑い。

県警は、女性の家族の強い希望を受けて呼吸器を外したことや、脳死状態だったことなどを考慮。男性医師が呼吸器を外した行為は故意に死期を早めたとして殺人容疑に当たるとしたが、犯意は薄いと判断したとみられる。
(呼吸器外し:「悪質性低い」医師送検に和歌山県警が意見書)


安楽死とは、末期がんを初めとした「治療不可能」かつ「苦痛の強い」疾患の患者を救済するため、医師などが積極的あるいは消極的手段によって死に至らしめること、とされています。今回のケースの場合、消極的安楽死と呼ばれ、これ以上の延命治療、努力をしないで死に致しめたと考えられます。

昭和37年の名古屋高裁の判決によると、安楽死は以下の6つの要件を満たせば違法性が阻却されるとされています。
1.死期が切迫していること
2.耐え難い肉体的苦痛が存在すること
3.苦痛の除去・緩和が目的であること
4.患者が意思表示していること
5.医師が行うこと
6.倫理的妥当な方法で行われること


家族の強い希望があったことや、すでに脳死状態に至っていたことを考えると、このようなケースでは認められても良いのではないかとも考えられますが、患者が意思表示がないことなど、上記要件を満たしてはいません。

このような問題が起こるたび、ガイドライン作りや法的整備が望まれるのですが、なかなか難しい問題のようです。

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