ニホンメダカのゲノム解読に国立遺伝学研究所と東京大などが成功した。約8億の塩基配列のうち現段階で読める7億を解読し、2万141個の遺伝子を見つけた。8割がヒトの遺伝子と類似していた。メダカは実験動物としてよく用いられるため、ヒトの遺伝病の原因遺伝子の特定に役立つという。7日付の英科学誌「ネイチャー」に掲載される。

脊椎動物のゲノム解読は10番目で、日本のチームだけによる解読は初めて。研究チームは、「脂肪肝」や腎機能が低下する遺伝病「多発性嚢胞腎症」などを起こした突然変異体のメダカを調べ、その原因遺伝子も特定した。武田洋幸・東京大教授は「ヒトの病気との関連を解明したい」と話している。脊椎動物の進化の過程を知るのにも役立つという。
(ゲノム解読成功:メダカとヒト 遺伝子類似)


ゲノム(genome)はある生物のもつ全ての遺伝情報です。遺伝子と、コードされないジャンクDNAの両方を指します。「ある生物をその生物足らしめるのに必須な遺伝情報」として定義されます。

人間は、約60億塩基対のDNAを核内に持っています。マウスとほぼ同じゲノムサイズと言われています。このゲノムのもつ遺伝情報を総合的に解析することをゲノム解析といいます。

ゲノム解析は、ゲノムを構成するDNA分子の塩基配列(GATCのならび)を決めることから始まります。しかし、塩基配列データからだけでは、どこにどのような遺伝子があるのかは簡単にはわかりません。

そこで、転写・翻訳によって作られるメッセンジャーRNAやタンパク質などの遺伝子産物の解析、生物種間で塩基配列がどれだけ似ているかなどの比較、さらに大腸菌や出芽酵母などの実験生物で解析された個々の遺伝子に関するデータなどを基に解析を進めます。この結果、どの遺伝子がどういった病気に関わっているのか、ということが分かり、さらには治療へ活かせたりします。

たとえば多発性嚢胞腎症、とくに常染色体優性多発性嚢胞腎ADPKDの病因遺伝子ADPKDの病因遺伝子として、第16染色体短腕のPKD1遺伝子と第4染色体長腕のPKD2遺伝子が同定されています(この結果は、患者家系の連鎖解析で分かったため、今回の研究とは異なりますが)。この遺伝子を研究し、遺伝子治療などが有効となれば、発症前に予防できるようになるかも知れません。

まだ、ゲノム解析がこうした臨床応用の主役を担うとは言えないでしょうが、今後、期待できる研究であることは間違いないのではないでしょうか。

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