費用と時間のかかる裁判ではなく、第三者の仲介で医療事故の紛争解決を目指す「医療ADR(裁判外紛争処理)」の仕組みをつくるため、早稲田大学紛争交渉研究所は24日、特定非営利活動法人(NPO法人)「医療紛争処理機構」の設立を来月上旬にも内閣府に申請すると発表した。対話による紛争の仲介にあたる医療メディエーターを育成し、来年1月の活動開始を目指す。同日、早大で開かれたシンポジウム「患者の声と対話型ADR」で明らかにした。
 
ADRは直訳すると「代替的紛争解決」の略。交通事故紛争処理センターのように、仲裁、調停、斡旋といった方法で裁判より低額、迅速に紛争を解決させる仕組み。

機構には、医療事故被害者や医療従事者、法律家らが参加。患者と医療従事者間の紛争を対話を通じて解決する場の提供や、医療紛争解決に精通した医療メディエーターの育成を図る。

同研究所長を務める早大大学院法務研究科の和田仁孝教授は「被害者が求めるのは謝罪や再発防止の約束など医療従事者の誠実な対応。対話の場は医療不信の払拭にも寄与する」と話している。

医療事故で高校2年の息子を亡くし、弁護士なしの訴訟で勝訴した佐々木孝子さんは「裁判では攻撃的に話をするだけで謝罪も得られない。対話により本当に許し合う心が出てくる」と期待を込めた。
(医療事故紛争処理NPO法人設立へ)


医療事故とは、医療において生じた事故すべてのことを指すそうです。その中で、医療過誤とは、主に医療従事者側等の人的または物的な過失のこと、またはそれら過失によって患者側に生じた人身事故のことだそうです。

最近では、執刀医が男性の弁膜症手術をした際に、心臓に挿入したカテーテルを誤って右心房に縫いつけ、それを認識したうえで翌日に、開胸し、縫合を解くなどせずに抜いてしまったという事件がありました。その結果、右心房は裂けて、男性は8日後に出血性ショックで亡くなったたそうです。

この事件からも、「もしかしたら(引っ張ったら)カテーテルが抜けるかも…」と思ってしまい、危険な状況を認識せずにこうした医療過誤を起こしてしまったのが分かります。

裁判に至ったのは、「ミスをきっかけとして、医師への不信が爆発した」という背景があるのではないでしょうか。その前に、しっかりと事件が起こった経緯を明らかにして、謝罪するといったことがあれば、患者さんのご家族も、補償などを別として、納得していただけるように思います。それ以前に、良好な医師−患者さん、そしてご家族の関係を築けているかどうか、ということも重要になってくると思います。

そうした関係を再構築する上で、こうした団体の存在が有用であるように思います。事件を第三者を交えて洗い直すことで、ご家族も納得していただけるように思えます。

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