名優として知られる68歳の高島忠夫が突然仕事のキャンセルを宣言したのは、1998年7月のことであった。原因は、出演したテレビ番組内で満足に受け答えが出来なかったため。妻で女優の寿美花代(高橋惠子)は、忠夫が2週間ほど前、原因不明の悪寒を訴えていたことから、すぐに大学病院の心療内科に連れて行った。

診察の結果は、かなり症状が進んだうつ病。薬物療法でしばらく様子を見ると言う医師の話を聞いた寿美は、その時、余り危機感はなかった。だが、事情を聞いた妹の泣き声を電話口で聞いた寿美は、ようやく事の重大さに気付いた。
 
忠夫の症状は、好きな音楽にも耳を貸さず、まばたき一つしないでボーっとしているうつ症状と、ハイテンションで眠れず酒をがぶ飲みするそう状態の繰り返しだった。家中の至る所に酒を隠し、それらを浴びるように飲む忠夫。そんな忠夫の面倒を見るうち、寿美は、いつしか疲労とストレスから身体を壊して入院するはめになった。だが、そんな状況ですら、まだ地獄の入口に過ぎなかった。
 
寿美が退院して程なく、大阪での舞台を終え2ヶ月ぶりに帰宅した長男・政宏は、忠夫の様子を見て愕然となった。寿美は、政宏と独立してマンション住まいの次男・政伸に心配を掛けまいと、忠夫の病気のことを黙っていたのだ。戸惑う政宏は、懸命に忠夫の世話をする寿美の相談に乗ってあげられず、声を掛けることすら出来なかった。
(『うつ』への復讐〜)


うつ病とは、気分障害の一種であり、抑うつ気分や不安・焦燥、精神活動の低下、食欲低下、不眠などを特徴とする精神疾患の一種です。

うつ病の主症状は、1)気分障害(感情障害),2)思考障害, 3)意欲・行為障害, 4)身体症状に分けられます。

1)気分障害(感情障害)とは、基本は抑うつ気分であり、程度が強くなると無感動になってしまいます。高島さんのように「好きな音楽にも耳を貸さない」といったことがあげられます。また、離人感を伴うこともあります。これは、「ものは見えているのにピンとこない」「自分がやっているのに,自分がやっているという感じがしない」といったことがあげられます。不安感や焦燥感が強いと不穏、焦燥、興奮状態を示すこともあります。

2)思考障害の特徴は、思考形式の面では思考が抑制された状態です。「何も考えられない」「頭の働きが悪くなってきた気がする」といったようなものです。
 他にも、罪業,貧困,心気妄想といったものが生じます。これは、「借金が莫大にあって、病院にも行けない(実際には借金などない)」「私が居なくなれば全て上手くいく」「私は癌に違いない」と思いこんでしまうようなものです。

3)うつ病の意欲・行為障害は、精神運動制止と呼ばれます。患者さんは、やらなければという気持ちは強いが、億劫でやれないと表現するそうです。

4)身体症状としては睡眠障害、食欲低下・体重減少、性欲減退、自律神経機能の障害、頭痛・頭重,易疲労・倦怠感などの頻度が高いそうです。高島さんの場合、不眠症状が強く出ていたようです。

また、抑うつ気分や精神運動制止は午前中に強く、夕方から夜にかけて軽くなる場合が多く,これを日内変動と呼びます。こうした特徴がうつ病にはあります。

一つの注意点として、「がんばって」「気の持ちようだ」「旅行にでも行って気分転換してはどうか」といった言葉は避けるべきであるとされています。さらにうつ病患者さんを追い込んでしまう可能性があります。

基本的な治療方針としては、「養生して、薬を飲んで、回復を待つ」とのことです。簡単に手っ取り早く治るという手段はありません。ドラマでも、回復までに3年以上かかったと描かれていました。

ですが、必ず治るものなのだとドラマでは最後に訴えていました。けして諦めず、ご家族の方も含め、長い目で治療を続けることが望まれます。

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