
眼球がゆがまないように角膜わきから高粘度の薬液を注射。ピンセットで水晶体の前嚢(前側の薄皮)をむく。超音波チップで水晶体を砕きながら吸引。空洞にしたところにレンズを埋め込む。
シリコンなど弾力素材のレンズは、直径2・75ミリの挿入管内で細く巻いて挿入し、挿入後に広げる。レンズから出る2本の細い“腕”で後嚢に固定する。「傷口は3ミリ以下で縫う必要はない」。手術は実質わずか7分で終わった。
男性は「昨年暮れに急に(視力低下が)きて、2カ月前に右目を手術した。左目はまだ大丈夫といわれたが、右目が鮮明になった分だけ見づらくなって手術を受けた」と語った。
「男性は若いころから近視なので、近視のレンズにした。個々の患者に合ったレンズ度数は、眼球の奥行きや角膜の曲率を測って算出する」と小原院長。この男性は近視の眼鏡が必要だが、読書などでは老眼鏡は必要ないという。
続いて左目を手術した武蔵野市の男性(86)は11分かかった。「高齢になるほど水晶体は硬くなり、30分以上かかる人もいる」(小原院長)。この男性は「65歳で白内障と診断された。年々見え方が悪くなるので手術を受けた」という。
小原院長は「眼内レンズの手術を知らずに“年だから”とあきらめたり、不自由を引きずったりする人がまだ多い。手術で視力が回復すれば、余生はまったく違うものになる」と話している。
(ぼやけた視界、スッキリ回復 白内障レンズ手術が定着)
白内障は、水晶体を構成する蛋白質(アクアポリン0)が変性し、黄白色または白色に濁ることにより発症します。ですが、その根本的な原因は解明されておらず、水晶体の細胞同士の接着力が弱まったり、水分の通りが悪くなったりして起こるのではないかといわれています。
糖尿病やアトピー性皮膚炎の合併で、白内障の発生率が上がると言われていますが、最も多いのは老人性です。発症は45歳以上の中年に多く、年齢を重ねるにつれて割合が増加します。
一旦発症し、混濁したものは元には戻りません。軽度の場合は薬により進行を抑えることがありますが、根本的な解決にはなりません。そこで、手術が重要となってきます。
現在、主流となった眼内レンズ手術は、平成4年から健康保険適用となったそうです。厚生労働省の推計では、16年に単眼・両眼計69万回余、17年に63万回余の手術が行われています。
これは、上記の通り、切開する幅が小さくて済むので、以前に行われていた、強膜を大きく切開して切開創を作成して水晶体をまるごと取り出す水晶体嚢内摘出術と違って、術後乱視が出にくいと考えられます。
手術で挿入する眼内レンズは、水晶体のように距離に応じてピントを合わせる能力がない。そのため眼内レンズの度数は、手術を受ける者の生活スタイルに合わせて1.5m〜2mの位置にピントが合うように眼内レンズの度数は決定されるようです。術後に気をつけなければならないのは、感染症。洗顔・洗髪は1週間禁止。1ヶ月は点眼を続け、目の酷使は厳禁ということを心がける必要があります。
たしかに、手術という選択肢はやはりハードルが高いことかも知れませんが、眼科医の先生曰く「白内障は、やって喜ばれる手術の一つ」と、効果の高い手術であることは確かなようです。「磨りガラスごしのように見える」「霧が掛かったようにみえる」などの症状がある方は、一度、病院で診察してもらってはいかがでしょうか。
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