国内で行われた生体肝移植で、提供者(ドナー)の30人に1人が手術により重い合併症にかかっていたことが、日本肝移植研究会の調査で6日、わかった。国内で実施される肝移植の9割以上を占める生体移植の提供者に大きなリスクがあることが、統計的に初めて明らかになった。

調査したのは、同研究会のドナー安全対策委員会(委員長=清沢研道・長野赤十字病院長)。2005年12月までに国内で行われた生体肝移植のうち、42施設3005例の症例を得た。

このうち、1)生死にかかわる可能性がある2)再手術を要した――など五つの問題に該当する症例を「重い合併症」と見なして調べたところ、105人(3・5%)が該当した。内訳は、肝臓を切った部分から「胆汁が漏れる」(45人)が多く、ほかに「2リットル以上の出血」(24人)、「感染症」(8人)など。46人は再び開腹手術を受けた。

国内では、2002年に京都大で手術を受けたドナーが肝不全で翌年死亡したほか、2005年には群馬大の手術でドナーが大量出血し、下半身不随になった。対策委は「生体肝移植には一定のリスクがある。提供者は、その点を十分踏まえて手術に臨んでほしい」と話している。
(生体肝移植のドナー、3%に重い合併症)


生体肝移植のドナーの条件としては、以下のようなものがあるようです。
1)20歳以上であること
2)患者さんと血縁(2親等)、または夫婦であること。
3)血液型がレシピエントと不適合な関係にならない(レシピエントがA型の場合、ドナーがA型もしくはO型である必要がある)。
4)肝臓のサイズが合っていること。
5)自分の意志で肝臓を提供したいと思っていること。
6)心身共に健康であること。
7)肝炎にかかっていないこと。

さらに、手術前から禁酒・禁煙しなければなりません。さらに、術後も約3ヶ月間、医師の指示が出るまで、肝機能低下を考えて禁酒は続けなければなりません。ドナーに関しても、術後の仕事復帰には数ヶ月を要し、大きな負担があります。

家族のためとはいえ、リスクへの理解や大きな決断が必要となります。
ドナー側のリスクとしては、術中の大量出血や術後の肺血栓塞栓症や感染症、切断部からの出血などの一般的なものから、肝機能の低下や肝不全による合併症などまであります。

3.5%のドナーが重い合併症を患っており、46人は再び開腹手術を受ける必要があった、とのことです。ドナーは「家族のために」といった理由で、肝臓の一部を提供していると思われます。そんなドナーの方々が、3%とはいえ、再手術をしなければならなかったり、合併症を抱えなければならないのは非常に大きな問題であると思われます。今後は、肝移植を行う施設や人員の見直しをはかり、こうした合併症発生率を下げるようにすべきではないか、と思われます。

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