虫さされで最も身近な存在は蚊だろう。蚊が血を吸うときに唾腺物質が人の皮膚に注入され、それに対するアレルギー反応によって患部が赤くなる。大人の場合、じんましんのような発疹が現れるが、それも短時間で消え、かゆみもすぐになくなる場合がほとんどだ。

注意しなければならないのは子供のケースで、赤くジクジクした発疹が数日から1週間ほど続くことがある。堀木院長は「子供はかゆみが強くなると、患部をかきむしり、とびひになってしまう恐れがあります。そうした兆候があれば、早めに皮膚科を受診させてください」と話す。

年齢とともに強い反応は緩和するが、大人も子供も蚊に刺された後に、高熱が出て体がだるくなったり、刺された部位の皮膚が潰瘍になって治りにくいときは、精密検査が必要だ。また、乳幼児は皮膚が弱いため、防虫スプレーの使用は避けた方がよい。

アウトドアやレジャーで、山や海、河原などに出かける機会も多くなる。特に、河原で注意しなければならないのはブユだ。体長が5ミリ程度の黒い小さな虫で、朝夕の薄暗い時間帯に河原で遊んでいるときに噛まれることが多い。ブユは皮膚に噛みついて出血させ、その血を吸う。噛まれてもわずかな出血を伴う紫色の発疹ができるだけで、痛みもなく次第に治っていく。

しかし、堀木院長は「川遊びに行って何回も噛まれるうちに、強いかゆみのあるジクジクした発疹になったり、しこりが残って激しいかゆみが数カ月も続くことがあります」と指摘する。河原では、袖や襟がしっかりと閉じた長袖・長ズボンの着用が望ましく、薄いストッキングは効果がないという。

蜂に刺された場合は、さらに注意が必要となる。集団に襲われたり、毒へのアレルギー反応が起きて生命に危険が及ぶこともあるからだ。堀木院長は「安静にしながら、すぐに救急車を呼ぶか、できるだけ早く病院に連れて行くこと。その間に患部を水で洗い流したり、冷たいタオルで冷やしてください。尿やアンモニアは、まったく効果がありません」と注意を呼び掛ける。
(あなどるな! 本当は結構怖い“虫さされ”)


虫さされなどで、死の恐れがあるものとしてアナフィラキシーショックがあります。

アナフィラキシーとは、ハチ毒や食物、薬物等が原因で起こる、急性アレルギー反応のひとつです。アナフィラキシーは、じんましんや紅潮(皮膚が赤くなること)等の皮膚症状や、ときに呼吸困難、めまい、意識障害等の症状を伴うことがあり、血圧低下等の血液循環の異常が急激にあらわれるとショック症状を引き起こします。結果、生命をおびやかすような危険な状態に陥ってしまうことがあります。

アナフィラキシーショックは、二峰性の経過をとるものがしばしばみられます。つまり、症状が落ち着いてきたな、と思ってもまた急激に悪くなることがあります。ですので、院内で経過観察(約8時間、重症例では24時間)をしなければならないとされています。

大切なこととしては、「まず、蜂のいそうなところは歩かない」という予防です。自分がハチ毒に対してアレルギーであることがわかっている場合は、とくに気をつけ、肌を露出しない、などの対策が必要になります。

もしショックを起こしてしまったら、エピネフリンの注射が真っ先に行われます。エピネフリンは、気管支や血管に働いて呼吸困難や血圧低下などを改善したり、問題となる免疫反応を抑えます。その他としては、抗ヒスタミン薬、ステロイド薬、気管支拡張薬等の投与が行われることもあります。

これからの行楽シーズンは、虫さされなどが起こりやすいかと思われます。十分、ご注意して、楽しんでください。

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