三洋電機は11日、診療記録を保存する電子カルテの作成と、会計などの医療事務を一体化したシステム「メディコム エイチアール」の販売を8月下旬に開始すると発表した。電子カルテは医療機関内で情報を一括して共有できるため、患者の待ち時間短縮や医療過誤の防止に役立つと期待されている。三洋は新規開業医を中心に需要の多い一体型システムの発売で、市場シェア50%の獲得を目指す。

メディコム エイチアールは、電子カルテと会計情報などを別画面で同時に表示するのが特徴。カルテに薬価など診察に必要のない情報が表示される他社の一体型システムと異なり、医師らが見やすいよう配慮した。カルテには過去の診療記録を同時に表示し、処方箋(せん)などをコピーして張り付けることも可能だ。サーバーやパソコンなど標準システム一式で400万円から。年間1000台の販売を目指す。

三洋によると、電子カルテシステム市場は2010年までに現在の2倍の約110億円に膨らむ見通し。三洋は電子カルテと医療事務の各システムのラインアップに、一体型システムを追加し、拡販を図る。11に会見した小宮宏之メディコム事業部長は「電子カルテは医療の質向上の鍵となる機器。一体型システムの発売でシェアを拡大したい」と意気込みを語った。
(三洋電機が電子カルテ・会計一体化 新医療システム来月販売)


電子カルテとは、従来、医師や歯科医師が診療の経過を記入していた、紙のカルテを電子的なシステムに置き換え、電子情報として一括してカルテを編集・管理し、データベースに記録する仕組みです。簡単に言ってしまえば、患者さんにまつわるデータを紙ではなく、電子データとして残す、ということです。以下のような特徴があります。
【利点】
1)カルテの物理的な管理が不要になり、紛失の恐れが少なくなる。長期の大量保存も容易。
2)テキストとして診療経過が保存されるため、文字が判読不能といった問題がなくなる。
3)院内をネットワーク化することにより、任意の場所でカルテを呼び出して参照できる。
4)検査結果や画像とリンクさせることで、画像に直接コメントを入れたり、データをその場で様々な切り口からグラフ化するなど従来できなかった記載が可能になる。
5)紹介状、診断書作成時や学会発表時などに、データの柔軟な再利用が可能。
6)処方や検査オーダーと一体化することで実際の実施内容と記載内容を容易に一致させられる。

カルテの判読しづらさは、ある意味「有名」なことではないでしょうか。その点でも正確性を増したり、データのやりとりの利便性、薬の処方箋を掲載する際も、使用目的や用量が「危険である」と判断された場合、アラームや注意を促せる、といった利点があると思われます。一方、
【欠点】
1)ディスプレイ上での一覧性は見開きの紙に比べて非常に低い。
2)ペン1本で記載できる紙と違い、操作に慣れが必要で入力時間もかかるうえ、入力内容の柔軟性も低い。
3)停電時、システムダウン時などに閲覧さえできなくなる危険性がある。このため、電力の供給停止や通信ネットワークの断絶が予測される災害時医療などには不向きである。
4)データ量が膨大である為、システム全体のレスポンスが悪い。
5)セキュリティへ配慮する必要性が高い。
6)デジタルな文字は記憶をたどることが難しくなる。
7)データの短時間で大規模な盗難が考えうる。
8)認証には通常パスワードや指紋認証などを利用するが、万全なものとは言い難い。
9)改変に際して証拠が残りづらい。

などの特徴があり、特にセキュリティの問題が懸念されます。

ですが、会計に関してもすぐさま処理できるようになれば、受付→診察→(薬の受け渡し)→会計の時間が短くなり、患者さんにとっても利点があるように思われます。

今後、こうしたソフトはより一般的に使われていくようになると思われます。医師から薬局へ患者の処方箋を電子データとして送信するサービスを無料で提供する試みは、すでに米国で始まっているそうです。サービスを提供するのは、マイクロソフトなどIT(情報技術)大手が手を組んだ企業連合だというから、強力です。その一方で、セキュリティの面でも技術開発が求められていくと思われます。

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