財団法人・癌研究会の癌化学療法センターと東京大学医科学研究所などの研究チームは、慢性骨髄性白血病の治療薬「グリベック」(一般名イマチニブ)の効き方を遺伝子で事前に診断する基盤技術を開発した。切除したがん組織から抽出した10―20種の遺伝子で見極める。他の抗がん剤への応用も目指す。
グリベックの効果のある患者とそうでない患者を30人以上選び、病巣からがん細胞だけを切り出して2万種以上の遺伝子を抽出した。少量の検体から確実に見分けられるように各遺伝子を増幅しながら薬の感受性との関係を解析した。
(がん研など、白血病薬の効き方を遺伝子で事前診断)
慢性骨髄性白血病(CML:Chronic myelogenous leukemia)とは、骨髄における造血幹細胞の無秩序な分裂によって特徴づけられる慢性白血病の一形態です。
フィラデルフィア染色体と呼ばれる、特徴的な染色体転座と関連した造血幹細胞の無制限な増殖を伴う病気です。ちなみに、フィラデルフィア染色体という名前の由来は、1960年代にペンシルヴァニア州フィラデルフィアの2人の研究者によって発見されたことによります。
フィラデルフィア染色体は、この染色体転座によって、2つの染色体(9番染色体と22番染色体)の位置が入れ替わります。その結果、22番染色体における BCR(breakpoint cluster region)遺伝子の一部は、9番染色体のABL遺伝子と融合してしまいます。この正常ではない融合遺伝子は、p210、時にはp185(pは細胞蛋白質の重さの基準)と呼ばれるチロシンキナーゼ活性が亢進されたBcr-Abl融合蛋白を生み出します。その結果細胞増殖のシグナル伝達に異常が起こり、過剰な細胞増殖が引き起こされ、慢性骨髄性白血病となってしまいます。
グリベック(メシル酸イマチニブ)は、BCR-ABLチロシンキナーゼという酵素のはたらきを阻害します。その結果、骨髄のがん細胞の異常増殖を止めることができると考えられています。
ですが、グリベック(メシル酸イマチニブ)には、耐性ができることがあります。イマチニブ耐性の機序は大きく分けて二つあり、一つはBCR/ABL非依存性に起こるもので不可染色体異常によって引き起こされます。もう一つはBCR/ABL依存的な機序でBCR/ABL蛋白の増加、BCR/ABLキナーゼ領域内の点変異などがあげられます。
多くは後者の「BCR/ABL依存性」で、BCR/ABLキナーゼ領域内の点変異によりBCR/ABL自体がイマチニブに耐性となって生じる場合が大部分であることが最近明らかにされています。イマチニブ耐性を生じる多くの点変異が報告され、それら点変異の耐性度、出現頻度についても報告されていますが、E255KおよびT315I変異で耐性度が高く、出現頻度が多いと考えられています。
こうした耐性や感受性の違いがあるため、遺伝子を解析することで効く効かないが判断できると思われます。より効果的に治療ができる方法が開発されることで、患者さんへの負担も軽減されることかと期待されます。
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フィラデルフィア染色体は、この染色体転座によって、2つの染色体(9番染色体と22番染色体)の位置が入れ替わります。その結果、22番染色体における BCR(breakpoint cluster region)遺伝子の一部は、9番染色体のABL遺伝子と融合してしまいます。この正常ではない融合遺伝子は、p210、時にはp185(pは細胞蛋白質の重さの基準)と呼ばれるチロシンキナーゼ活性が亢進されたBcr-Abl融合蛋白を生み出します。その結果細胞増殖のシグナル伝達に異常が起こり、過剰な細胞増殖が引き起こされ、慢性骨髄性白血病となってしまいます。
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ですが、グリベック(メシル酸イマチニブ)には、耐性ができることがあります。イマチニブ耐性の機序は大きく分けて二つあり、一つはBCR/ABL非依存性に起こるもので不可染色体異常によって引き起こされます。もう一つはBCR/ABL依存的な機序でBCR/ABL蛋白の増加、BCR/ABLキナーゼ領域内の点変異などがあげられます。
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こうした耐性や感受性の違いがあるため、遺伝子を解析することで効く効かないが判断できると思われます。より効果的に治療ができる方法が開発されることで、患者さんへの負担も軽減されることかと期待されます。
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