昨年10月、埼玉県新座市内の中学校で「失神ゲーム」によって当時3年生の男子生徒に怪我を負わせたとして、被害者の少年とその親が、加害者の元同級生の少年5人とその親に対し約330万円の損害賠償請求していることがわかった。

訴えによると、少年らは10月12日に男子トイレ内で被害少年の胸を強く圧迫し失神させ、目を覚まさせるために頭部などを殴るなどした疑い。警察はこの5人を逮捕。1人は少年院送致、4人は保護観察処分を受けているという。

この事件に対しブログでは「いじめだったかどうかが問題だ」「こんなゲームの存在は知らなかった、驚きだ」という保護者の声が寄せられている。
(「失神ゲーム」で怪我 同級生の少年5人を損害賠償請求)


「失神ゲーム」とは、は、他人を何らかの方法で失神させ、それを楽しむ遊戯行為とのこと。何らかの方法で失神していく状況や失神させる行為に興ずることであり、「気絶遊び」などともいわれます。小・中学生を中心に、いじめの一環や罰ゲームなど遊び半分で行われているそうです。

ですが、失神させる際に傷害を与えたり、生死に関わる危険性を持つため(虚血状態におちいるわけだから、脳細胞にダメージが及ぶ可能性がある)、すでに刑事問題に発展している危険性があります。絶対に真似しないようにお願いいたします。

柔道の絞め技や、スリーパーホールドをかけると、一過性に意識がなくなります(いわゆる「落ちる」という状態)。これは、頚動脈洞反射によると考えられています。頚動脈洞には、血圧の変化を感受する圧受容体が存在します。血管内圧の上昇や外部から頚動脈洞の圧迫(頚動脈洞圧迫試験)より、反射的に徐脈、血圧低下(減圧・血管拡張)および呼吸抑制が起こり、これを頚動脈洞反射といいます。

ちなみに、発作性上室性頻拍という若い人に比較的多い不整脈に対しては、この頚動脈洞反射を利用して落ち着かせることがあります。

ですが、遊びで不用意に強く刺激すると、迷走神経の過剰な反射によって失神を起こしてしまいます。

また、上記のように「胸を強く圧迫し失神」させる方法は、ヘーリング・ブロイエル反射が関連していると考えられます。これは、肺の進展に伴って刺激性が生じ、迷走神経を介して呼吸調節(吸息と呼息の切り換えを行います。迷走神経を介しているので、徐脈になるようです)を行うものです。

息を大きく吸った瞬間に、さらに胸部を急激に押して圧力をかけると、肺の圧受容体が過剰に興奮して、迷走神経の過反射(→徐脈)→失神してしまうと考えられます。

いずれにせよ、非常に危険な行為です。意識を失ったときに頭部を打ち付けてしまったり、脳の虚血状態によるダメージなど、多くの危険性をはらんでいます。不用意に真似をするような行為は、是非とも慎んでいただきたいと思われます。

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