国内約130の民間不妊治療施設でつくる「A―PART日本支部」は11日、白血病などの治療で不妊になる恐れがある未婚女性12人の卵子の凍結保存を、東京都、石川県、大阪府の4施設で実施したと発表した。 保存は日本産科婦人科学会が1月に臨床研究として容認しており、実施状況の公表は初めて。
同支部長の宇津宮隆史セント・ルカ産婦人科(大分市)院長によると、7月末現在で、白血病や悪性リンパ腫など血液のがんの女性患者39人から問い合わせがあり、20人が卵子保存の意志を固めた。このうち、18―31歳の12人に計18回採卵を試み、卵子(平均5.4個)を凍結保存した。
(未婚女性12人の卵子を凍結保存、4施設実施を初公表)
白血病や悪性リンパ腫など血液の「がん」では、がん細胞を除去するため、抗癌剤治療や全身の放射線照射を行います。化学療法の理念は「Total cell kill」といって、すべての白血病細胞を、殺傷してしまうというものです。
当然、正常の骨髄細胞も大きなダメージを受け、骨髄細胞は非常に少なくなります(低形成状態)。その状態を経て、骨髄中に正常の造血細胞が回復してくるのを待つわけです。一般に、白血病細胞より、正常造血幹細胞の方が回転数が速いので、先に正常細胞が回復して、順調に行けば骨髄も血液も正常な血液細胞で満たされた状態になります。一般的な検査では、白血病の所見はみられなくなります。この状態を完全寛解といいます(検出できないだけで、腫瘍細胞は潜んでいることもあります。結果、再発することもあります)。
こうした「Total cell kill」の下に治療していると、その経過中に卵巣や精巣の機能が失われ、不妊になることが多くいというわけです。
男性の場合、精子を事前に凍結保存する方法が普及していますが、女性の場合、卵子の採取や保存が難しく、凍結保存はほとんど行われてきませんでした。
特に、未受精卵は受精卵に比べてもろく、低温になると細胞内の水分が氷の結晶構造を作るために膨張し、細胞が壊れやすいそうです。凍結しても、従来の方法では解凍後の卵子の生存率は約2割に過ぎず、体外受精で出産に至る確率はわずか1%程度とされていました。
ですが、未受精卵を凍結保存する「ガラス化法」という新技術が開発され、解凍後の未受精卵の生存率は98%に高まったそうです。「ガラス化法」は、細胞内の水分を毒性のない特別な溶液に徐々に置き換え、氷の結晶を作らずに凍結させる方法です。また、放射線治療の際、卵巣の部分だけを厚いタングステンで覆い、放射線を遮断して卵巣機能を守る手法もあるそうです。
白血病の治癒率も上がり、今後は治療後の不妊に関しても研究が必要とされる時代になっているようです。現段階では卵子凍結保存に関しては、臨床研究として容認している状況だそうですが、研究を積み重ね、今後は広く普及していって欲しいと思われます。
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同支部長の宇津宮隆史セント・ルカ産婦人科(大分市)院長によると、7月末現在で、白血病や悪性リンパ腫など血液のがんの女性患者39人から問い合わせがあり、20人が卵子保存の意志を固めた。このうち、18―31歳の12人に計18回採卵を試み、卵子(平均5.4個)を凍結保存した。
(未婚女性12人の卵子を凍結保存、4施設実施を初公表)
白血病や悪性リンパ腫など血液の「がん」では、がん細胞を除去するため、抗癌剤治療や全身の放射線照射を行います。化学療法の理念は「Total cell kill」といって、すべての白血病細胞を、殺傷してしまうというものです。
当然、正常の骨髄細胞も大きなダメージを受け、骨髄細胞は非常に少なくなります(低形成状態)。その状態を経て、骨髄中に正常の造血細胞が回復してくるのを待つわけです。一般に、白血病細胞より、正常造血幹細胞の方が回転数が速いので、先に正常細胞が回復して、順調に行けば骨髄も血液も正常な血液細胞で満たされた状態になります。一般的な検査では、白血病の所見はみられなくなります。この状態を完全寛解といいます(検出できないだけで、腫瘍細胞は潜んでいることもあります。結果、再発することもあります)。
こうした「Total cell kill」の下に治療していると、その経過中に卵巣や精巣の機能が失われ、不妊になることが多くいというわけです。
男性の場合、精子を事前に凍結保存する方法が普及していますが、女性の場合、卵子の採取や保存が難しく、凍結保存はほとんど行われてきませんでした。
特に、未受精卵は受精卵に比べてもろく、低温になると細胞内の水分が氷の結晶構造を作るために膨張し、細胞が壊れやすいそうです。凍結しても、従来の方法では解凍後の卵子の生存率は約2割に過ぎず、体外受精で出産に至る確率はわずか1%程度とされていました。
ですが、未受精卵を凍結保存する「ガラス化法」という新技術が開発され、解凍後の未受精卵の生存率は98%に高まったそうです。「ガラス化法」は、細胞内の水分を毒性のない特別な溶液に徐々に置き換え、氷の結晶を作らずに凍結させる方法です。また、放射線治療の際、卵巣の部分だけを厚いタングステンで覆い、放射線を遮断して卵巣機能を守る手法もあるそうです。
白血病の治癒率も上がり、今後は治療後の不妊に関しても研究が必要とされる時代になっているようです。現段階では卵子凍結保存に関しては、臨床研究として容認している状況だそうですが、研究を積み重ね、今後は広く普及していって欲しいと思われます。
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