29日午前5時10分ごろ、大阪府高槻市富田丘町の国道171号交差点で、奈良県橿原市の女性(36)を搬送中だった救急車と、大阪府茨木市の自営業男性(51)の軽ワゴン車が衝突した。女性は妊娠3カ月で、別の救急車で午前5時50分ごろ病院へ着いたが、流産が確認された。女性らにけがはなかった。
 
奈良県の中和広域消防組合によると、女性は同日午前2時45分ごろ、出血を伴う腹痛を訴え119番通報。産婦人科を探したが、奈良県では受け入れ先が見つからず、12カ所目に打診した高槻市の病院へ搬送する途中だった。
 
高槻署の調べでは、救急車は赤色灯をつけて直進。青信号で交差点に進入した軽ワゴン車とぶつかった。同署は双方に落ち度のない事故で、事故と死産の関係は分からないとしている。
(10病院に受け入れ断られ、救急搬送の妊婦流産)


流産とは、妊娠の継続が停止することを指し、日本産科婦人科学会では「妊娠22週未満の妊娠中絶を流産」と定義し、22週以降の場合では、「死産」と定義されています。なお、妊娠12週未満の流産を「早期流産」、妊娠12週以降22週未満の流産を「後期流産」といいます。

今回のケース得では、女性は妊娠3カ月とのことで、明らかに22週未満ですので、「流産」と考えられます。

流産の種類としては、以下のようなものがあります。
・切迫流産(Threatened abortion)
概念:流産が生じようとしている状態。流産になる場合と持ちこたえる場合とがある。子宮出血はあるが頸管は開大していない。
症状:軽度の下腹部の痛みと少量の性器出血

・進行流産(Inevitable abortion)
概念:流産が生じ、進行している状態
症状:下腹部痛や出血が強く、頸管は開大しており保存的な治療は不可能なものである。

・完全流産(Complete abortion)
概念:流産が生じ、子宮内容物が娩出された状態
症状:下腹部痛と性器出血の消失

・不全流産(Incomplete abortion)
概念:流産が生じたが、子宮内に残存物が残っている状態
症状:下腹部の痛み、性器出血の持続

・稽留流産(Missed abortion)
概念:子宮内で胎児が死亡している状態であるが、妊婦に症状が無いもの。
症状:自覚症状は無い。妊婦検診等で超音波検査によって発見される。

今回のケースでは、運ばれた状態で切迫流産にあったのか進行流産にあったのか分かりませんが、早期に処置を行っていれば、もしかしたら助けられたのかもしれない、と思ってしまいます。

現在、産婦人科の救急患者を受け入れられる病院が減りつつあるようです。
すでに、リスクが高い妊娠・出産を引き受ける中核施設として全国に60カ所余り設置されている総合周産期母子医療センターの診療態勢を厚生労働省研究班が調べたところ、回答施設の約2割が、脳出血など産科以外の妊産婦の急性疾患は「受け入れ不可能」とし、態勢に不安があることが分かっています。

今後、さらなる危機的な状況が起こってくることも予想されます。早急な都道府県・政府レベルの対策が望まれます。

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