ある種の遺伝子異常が男性不妊と関連しているのかどうかを調べる臨床研究に、東北大とセント・ルカ産婦人科(大分市、宇津宮隆史院長)のチームが近く本格的に乗り出すことが明らかになった。

不妊治療で体外受精をする際、運動能力が高い精子を選んで卵子と受精させるが、妊娠に至らないケースも多く、未知の原因が疑われている。遺伝子異常との関連が解明されれば、将来、診断や治療に生かせる可能性もあるという。

日本産科婦人科学会にも研究登録を申請済みで、倫理委員会小委員会が審査中。
計画によるとチームは、不妊治療を受ける男性患者約100人から精子を提供してもらい、遺伝子に異常がないかを調べる。中でもチームが注目するのは、父、母からそれぞれ受け継いだ計2つの遺伝子のうち、一方だけが働くように調節された「刷り込み遺伝子」と呼ばれる遺伝子の異常。

海外で近年、体外受精や顕微授精などによって生まれた子供では、刷り込み遺伝子の異常で起こる奇形や病気の割合が多いと報告されているためだ。有馬隆博東北大准教授(婦人科学)は「不妊男性の精子に遺伝子異常があった可能性が考えられる」と話す。

チームが一部の遺伝子を対象に予備的に実施した調査では、不妊治療中の男性から採取した精子サンプルの約4分の1で、1〜3つの刷り込み遺伝子に異常が見つかったという。
(不妊と遺伝子の関連は 東北大などが研究へ)


2006年に出産した30代女性を対象に5月下旬に実施した調査で、「不妊治療を受けていた」との答えが13.8%だったそうです。少子化対策として不妊治療費の負担軽減が必要と指摘する声も43.8%に上っており、出産数の過半数を占める30代女性の間で、不妊治療に抵抗感が薄れ、期待が大きいことがわかっています。

ですが、一方でその切なる願いが届かないこともあるようです。その問題点の一部として、不妊男性の精子に遺伝子異常があった可能性が考えられるケースがあるそうです。中でも、上記ニュースのように「刷り込み遺伝子」と呼ばれる遺伝子の異常が存在している、とのこと。

このインプリント(刷り込み)遺伝子は、「卵子だけで作られたマウス誕生の成功率が30%に上昇した」という話題でも出てきました。精子から伝わった場合にしか働かない2つのインプリント遺伝子を、卵子でも働くように操作し、いわば"雄型"の卵子を作る"という手法により、卵子を"騙す"ことで成功率を上げた、とのことです。

このことから、マウスの卵子の遺伝子を操作し、父型のインプリントに似せた遺伝子の働きを再現することで、哺乳類の発生には、父型と母型の両方の遺伝情報が必要(たとえ、一方は発現しなくても)なことが考えられます。

この部分に異常があることで、妊娠ができない、ということの一端になっていることがある、と考えられている訳ですね。もし、この異常を回避(上記の実験のように、あたかも卵子や精子を"騙して"、インプリント遺伝子に異常がないと思わせる、もしくはインプリント遺伝子を正常化することで)することができれば、妊娠できるようになるかも知れない、と期待されます。

今後も不妊治療は大きな存在になっていくことかと思われます。研究が進み、解決策が登場することを願います。

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