湿気が多くカビの生えた家に住む人はうつ病リスクが高いことが示され、米医学誌「American Journal of Public Health」10月号で報告された。

カビは真菌類に属するどこにでもいる微生物で、数万から数十万種が存在、毒性の高い代謝産物を作るものも多い。米国疾病管理予防センター(CDC)によると、カビの胞子は室内、野外ともに一年を通してみられ、暖かく湿気の多い場所で急速に増殖する。通常は石鹸や漂白剤によるこまめな清掃で防げるが、水害により深刻なカビ被害が生じることもある。

米国では、住居内のカビの許容量についての指針はないが、カビの胞子を吸い込むと呼吸器のアレルギー反応が誘発されたり、喘鳴、息切れ、肺感染症のほか、鼻詰まり、咳、頭痛、皮膚や喉、目の炎症が生じたりするという。特に、アレルギーや喘息患者、癌の化学療法中などで免疫不全状態にある人はリスクが高い。

米ブラウン大学(ロードアイランド州プロビデンス)のEdmond D. Shenassa氏らは、カビと精神衛生上の問題との関連を検討するため、2002〜2003年に世界保健機関(WHO)がフランス、ドイツ、スロバキア、ハンガリー、ポルトガル、イタリア、スイス、リトアニアの8都市から収集したデータを解析した。これは約3,000世帯、18〜104歳の約6,000人の対象者に直接問診を実施したもの。

過去1年間にうつ病と診断されたかどうかの質問に加え、過去2週間に睡眠障害、自尊心(self-esteem)の低下、食欲不振、活動への興味の減少という4つのうつ症状があったかどうか尋ね、3つ以上あったとした人はうつ病とされた。また、住居の状態について質問すると同時に、湿気やカビについて視察により評価。さらに、居住者自身が住宅環境を管理できていると思うかどうか、カビ曝露に関連する呼吸器症状、疲労感、頭痛などの有無を尋ねた。

湿気やカビの全くない住居で暮らす人は57%であったが、地域差が大きく、カビがある家はポルトガルでは80%以上、スロバキアでは25%未満だった。被験者の9%がうつ病であるとされ、ほかの因子を考慮しても、カビとうつ病との間に関連がみられ、「カビのある家で暮らす人はうつ病リスクが約40%高い」とShenassa氏は述べているが、現段階では因果関係は明確にされておらず、さらに研究が必要とのこと。微生物専門家は「どちらが原因でどちらが結果であるかはわからないが、いずれにしても家の中にカビを見つけたら除去すべし」と述べている。
(家庭内のカビがうつ病の原因)


湿気の多い日本とすれば、見過ごせない内容ではないでしょうか。

家庭内で見られるカビは、約10〜20種類存在していると考えられています。カビは温度20〜30度、湿度65%以上で発生します。特に梅雨時に多くなってきます。種類としては、コウジカビ、青カビ、クロカワカビ、ススカビなどがあります。

特に問題となるカビとしては、トリコスポロン(Trichosporon cutaneum)があります。これは、夏型過敏性肺臓炎の原因として有名です。

夏型過敏性肺炎とは、空気中のトリコスポロンを吸い込むことによって起きるアレルギー性の肺炎です。乾いた咳が止まらなくなります。ちなみに、トリコスポロンとは、家の中の高温で湿気の多い場所や腐った木の部分などに生息しています。

台所のシンクと壁の隙間や、脱衣所とお風呂の桟のすき間など、丁寧に掃除をしても普段は見落としがちな場所に生息しているそうです。特に、古い家屋や風通しの悪い家で発生しやすいと思われます。

こうした肺炎を起こしてしまうカビの他にも、気づいてはいないですが、多くの種類が家庭内にはあるようです。それらが原因となって、うつ病になってしまうのではないか、と上記ニュースで言われています。「カビのある家で暮らす人はうつ病リスクが約40%高い」とのこと。

カビの発生しやすい湿気の多い家では、実はシックハウス症候群とも関係していると言われています。シックハウス症候群は、ホルムアルデヒドに長期間曝露され続けると発症してしまうと考えられています。

合板に使われた接着剤に含まれるホルムアルデヒドが、湿気によって空中に出てきてしまうそうです。結果、部屋の中のホルムアルデヒド濃度が上がってしまうそうです。対策としては、十分な換気をすることが重要だとされています。

梅雨時に気分が落ち込みやすい、というのはもしかしたら、カビが関与しているのかも知れませんね(まぁ、日照時間が関係しているほうが大きいでしょうが)。

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