血液を採取して前立腺がんを早期に発見するPSA検査について、厚生労働省研究班(主任研究者・浜島ちさと国立がんセンター室長)が集団検診を推奨しない指針案をまとめたことに対し、日本泌尿器科学会(奥山明彦理事長)は10日、逆にPSA検診を推奨する学会指針を作ることを公表した。
どちらも10月をめどに成案とする予定で、完成すれば、研究班と学会による正反対の指針が並立する事態になる。
研究班は10日、都内の公開討論会でPSA検診の指針案を示した。国内外の研究論文を検証した結果、集団検診による死亡率の減少が明らかでないうえ、精密検査や治療による受診者への負担も無視できないため、市町村や職場で実施する集団検診としては「実施は勧められない」という方針を示した。
これに対し日本泌尿器科学会側は討論会終了後に記者会見を開き、50歳以上の男性を対象に、検診でがんを見つける利益と不利益を十分に説明したうえで希望者に検診を勧める独自の指針を作ることを明らかにした。現時点で死亡率の減少を証明する信頼性の高い研究がないことを認める一方で、検診を勧める根拠として、
1)PSA検診の普及率が75%に上る米国で死亡率が3割低下した
2)検診受診者に進行がんが減ったことを示す報告が欧州にある
――などを挙げた。
(前立腺がん検診、泌尿器科学会が推奨する独自指針作成へ)
厚労省は「PSA検査によるスクリーニングは推奨しない(ただし、任意に人間ドックなどで受けることは否定していません)」としていますが、泌尿器科学会は「いやいや、推奨されますよ」と指針を作成するそうです。欧米で信頼性の高い大規模研究が数年後にまとまる予定ですので、決着はそこで付きそうです。
そもそもPSAとは、前立腺特異抗原(prostate specific antigen : PSA)を指します。前立腺から分泌され精液中に含まれている生体物質で、分子量33〜34kの単鎖状糖蛋白です。セリンプロテアーゼに分類されるタンパク質分解酵素の一種。
どういう機能を担っているのかは不明で、一説によれば精液の粘度を調整して精子の運動を助けているのではないかと考えられています。
前立腺癌のとき血清中の含有量が上昇するため、腫瘍マーカーとして用いられています。ただし、炎症(前立腺炎)や前立腺肥大症などでも上昇することがあり、必ずしもPSAの高値があったからといって、前立腺癌だとは言えません。ですが、血中PSA値は、前立腺癌患者で著明に増加し、また病勢をよく反映して変動することから、前立腺癌の診断、予後判定および経過観察の有効な指標として用いられています。
年齢によっても異なりますが、4.1〜10.0ng/mlを「軽度癌疑い」、10.0ng/ml以上を「高度癌疑い」として測定値の解釈を行います。
たしかに、明確な根拠がないうちにスクリーニング検査として採用してしまうと、医療費の増大や、もし「効果無し」というエビデンスが出てしまったときのことを考えると批判は免れないのかもしれない、と思う厚労省の立場は分かりますが、もしかしたらそこで救える命や、早期発見、早期治療が行える可能性もあるわけです。
混迷の状態を呈していますが、決着は数年後に着きます。それまでは、自主的に検査を受けられたほうがよろしいのではないでしょうか。
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どちらも10月をめどに成案とする予定で、完成すれば、研究班と学会による正反対の指針が並立する事態になる。
研究班は10日、都内の公開討論会でPSA検診の指針案を示した。国内外の研究論文を検証した結果、集団検診による死亡率の減少が明らかでないうえ、精密検査や治療による受診者への負担も無視できないため、市町村や職場で実施する集団検診としては「実施は勧められない」という方針を示した。
これに対し日本泌尿器科学会側は討論会終了後に記者会見を開き、50歳以上の男性を対象に、検診でがんを見つける利益と不利益を十分に説明したうえで希望者に検診を勧める独自の指針を作ることを明らかにした。現時点で死亡率の減少を証明する信頼性の高い研究がないことを認める一方で、検診を勧める根拠として、
1)PSA検診の普及率が75%に上る米国で死亡率が3割低下した
2)検診受診者に進行がんが減ったことを示す報告が欧州にある
――などを挙げた。
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厚労省は「PSA検査によるスクリーニングは推奨しない(ただし、任意に人間ドックなどで受けることは否定していません)」としていますが、泌尿器科学会は「いやいや、推奨されますよ」と指針を作成するそうです。欧米で信頼性の高い大規模研究が数年後にまとまる予定ですので、決着はそこで付きそうです。
そもそもPSAとは、前立腺特異抗原(prostate specific antigen : PSA)を指します。前立腺から分泌され精液中に含まれている生体物質で、分子量33〜34kの単鎖状糖蛋白です。セリンプロテアーゼに分類されるタンパク質分解酵素の一種。
どういう機能を担っているのかは不明で、一説によれば精液の粘度を調整して精子の運動を助けているのではないかと考えられています。
前立腺癌のとき血清中の含有量が上昇するため、腫瘍マーカーとして用いられています。ただし、炎症(前立腺炎)や前立腺肥大症などでも上昇することがあり、必ずしもPSAの高値があったからといって、前立腺癌だとは言えません。ですが、血中PSA値は、前立腺癌患者で著明に増加し、また病勢をよく反映して変動することから、前立腺癌の診断、予後判定および経過観察の有効な指標として用いられています。
年齢によっても異なりますが、4.1〜10.0ng/mlを「軽度癌疑い」、10.0ng/ml以上を「高度癌疑い」として測定値の解釈を行います。
たしかに、明確な根拠がないうちにスクリーニング検査として採用してしまうと、医療費の増大や、もし「効果無し」というエビデンスが出てしまったときのことを考えると批判は免れないのかもしれない、と思う厚労省の立場は分かりますが、もしかしたらそこで救える命や、早期発見、早期治療が行える可能性もあるわけです。
混迷の状態を呈していますが、決着は数年後に着きます。それまでは、自主的に検査を受けられたほうがよろしいのではないでしょうか。
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