体外受精で双子の女の子を授かったオーストラリアの女性同性愛者のカップルが、子供は1人しか欲しくなかったとして、医者を相手取り裁判を起こしている。
カップルは担当医に対し、子供は1人だけ欲しいということを明確に伝えたと主張しており、40万豪ドル(約4000万円)以上の賠償金支払いを求めている。賠償金は、私立学校の学費を含む2人目の子供の養育費に充てるという。
双子の女の子は現在3歳。今回の民事訴訟は同国初のケースであり、子供の価値や親の役割についての議論を巻き起こしている。
ガイ・バーネット上院議員は、公的資金を受けた体外受精について、同性愛カップルや未婚女性への適用を禁止すべきだと主張。次期連邦総選挙では、この問題が新たな争点となる可能性も出ている。
(1人だけ欲しかった…体外受精で双子授かり、医者を提訴)
生殖医療における体外受精(In Vitro Fertilization:IVF)とは、不妊治療の一つで、通常は体内で行われる受精を体の外(シャーレ上)で行う方法です。受精し、分裂した卵(胚)を子宮内に移植することを含めて体外受精・胚移植(IVF-ET)といいます。
自然での人間の周期あたり妊娠率は、平均15%前後とされていますが、IVF-ETの場合、25%程度まで引き上げることができます。卵管閉塞などの器質的原因や、タイミング法・人工授精を試したが、妊娠に至らなかった場合に用いられます。
手順としては、採卵と採精をして、採卵から1〜3時間後にシャーレの中で調整済みの精子を振りかけて受精を行います。受精した卵は分割をし、翌日には受精卵として確認できます。体外受精が成功するかどうかの1つの鍵は、どれだけ質の良い受精卵を選別することです。色がきれいで、透明感があり、形が良く、はりがあって、傷がない受精卵が着床率が良いそうです。
着床率を上げるため、複数の受精卵を戻します。以前は、一度の体外受精で多数の受精卵を子宮に戻すこともありましたが、3胎以上の超多胎妊娠の例も増えてしまいました。超多胎妊娠は母体への負担が大変大きいだけでなく「一度にたくさんの子供が生まれても、育てきれない」という事情も産んでしまいます。また、減数手術や全数堕胎という、不妊治療としては本末転倒な事態も頻発してしまったそうです。
そのために、現在は「体外受精で一度に子宮へ戻す受精卵は3個まで」という産婦人科学会によるガイドラインができています。ですが、それでも双胎児や多胎児は生まれる可能性はあります。「カップルは担当医に対し、子供は1人だけ欲しいということを明確に伝えたと主張」していますが、それは難しい注文ではないでしょうか。着床率を上げる兼ね合いで、どうしても"1つだけ受精卵を戻す"というわけにもいかず、また、1つだけ戻しても、分裂時に双胎となる可能性(一卵性双生児)もあります。
患者の多様な意見を聞き、それに応えることは医師として必要かとは思いますが、これは行き過ぎではないでしょうか。裁判の行方が気になるところです。
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双子の女の子は現在3歳。今回の民事訴訟は同国初のケースであり、子供の価値や親の役割についての議論を巻き起こしている。
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(1人だけ欲しかった…体外受精で双子授かり、医者を提訴)
生殖医療における体外受精(In Vitro Fertilization:IVF)とは、不妊治療の一つで、通常は体内で行われる受精を体の外(シャーレ上)で行う方法です。受精し、分裂した卵(胚)を子宮内に移植することを含めて体外受精・胚移植(IVF-ET)といいます。
自然での人間の周期あたり妊娠率は、平均15%前後とされていますが、IVF-ETの場合、25%程度まで引き上げることができます。卵管閉塞などの器質的原因や、タイミング法・人工授精を試したが、妊娠に至らなかった場合に用いられます。
手順としては、採卵と採精をして、採卵から1〜3時間後にシャーレの中で調整済みの精子を振りかけて受精を行います。受精した卵は分割をし、翌日には受精卵として確認できます。体外受精が成功するかどうかの1つの鍵は、どれだけ質の良い受精卵を選別することです。色がきれいで、透明感があり、形が良く、はりがあって、傷がない受精卵が着床率が良いそうです。
着床率を上げるため、複数の受精卵を戻します。以前は、一度の体外受精で多数の受精卵を子宮に戻すこともありましたが、3胎以上の超多胎妊娠の例も増えてしまいました。超多胎妊娠は母体への負担が大変大きいだけでなく「一度にたくさんの子供が生まれても、育てきれない」という事情も産んでしまいます。また、減数手術や全数堕胎という、不妊治療としては本末転倒な事態も頻発してしまったそうです。
そのために、現在は「体外受精で一度に子宮へ戻す受精卵は3個まで」という産婦人科学会によるガイドラインができています。ですが、それでも双胎児や多胎児は生まれる可能性はあります。「カップルは担当医に対し、子供は1人だけ欲しいということを明確に伝えたと主張」していますが、それは難しい注文ではないでしょうか。着床率を上げる兼ね合いで、どうしても"1つだけ受精卵を戻す"というわけにもいかず、また、1つだけ戻しても、分裂時に双胎となる可能性(一卵性双生児)もあります。
患者の多様な意見を聞き、それに応えることは医師として必要かとは思いますが、これは行き過ぎではないでしょうか。裁判の行方が気になるところです。
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