日本人はヘリコバクター・ピロリ菌に感染すると胃がんになりやすい体質であることが、名古屋大学の浜島信之教授(予防医学)らの研究でわかった。調査によると、日本人とブラジルに住む日系人約1500人の遺伝子を解析、96%が感染によって胃がん発症リスクが高まる遺伝子タイプだった。10月3日から横浜市で開かれる日本癌学会で発表する。
塩分の取り過ぎや喫煙などでも胃がんになりやすくなるとされている。胃がん予防に対するピロリ菌の除菌効果について医師の間でも意見が分かれているが、浜島教授は「日本人は積極的に除菌した方がよい」と話している。
(ピロリ菌感染で、日本人96%が胃がんリスク・名大教授ら調査)
ピロリ菌ことヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)は、ヒトなどの胃に生息するらせん型の細菌です。1983年 オーストラリアのロビン・ウォレン(J. Robin Warren)とバリー・マーシャル(Barry J. Marshall)が自らの体で菌の存在を証明したことは、CMにもなり有名ではないでしょうか。
健康な胃では、粘膜を構成する細胞がすき間なく並んでいます。「PAR1」と呼ばれる酵素が細胞同士を結び付ける役割を果たしていますが、ピロリ菌が作り出すタンパク質「CagA」は、PAR1と結合し、その機能を阻害してしまいます。結果、隙間が出来てそこに胃酸が流れ込むと、胃炎や胃かいようが引き起こされてしまうようです。
また、通常は免疫細胞(Bリンパ球)にしかない「AID」と呼ばれる酵素を利用しているため、その作用で胃粘膜細胞が癌化してしまう、ということも突き止められています。
ピロリ菌は幼児時に経口感染し、胃に数十年すみ続け、慢性胃炎を起こします。日本では40代以上の7割が感染しているといいます。胃がんでは最も重要な発がん因子であるとされています。ですので、ピロリ菌除去が、慢性胃炎や胃癌の予防に重要であると言えると思います。
ピロリ菌感染と発癌のリスクと関連していると思われるのは、IL-1Bの遺伝子多型があげられています。IL-1Bは、インターロイキン1βをコードする遺伝子でいくつかの遺伝子多型を持ち、そのうちのC-31Tでは-31Cに比べ-31Tで発現が高いという報告があります。
インターロイキン1βはピロリ菌感染により誘導され、胃酸分泌を低下させ、ピロリ菌の感染継続に有利な状況を作り出します。C/C型およびC/T型の人に比べ、T/T型の人ではいずれの対象者についても一貫してピロリ菌抗体陽性率が高いとのことです。
また、国内にいる「アジア型」のピロリ菌は、CagAを持っており、胃に感染すると、粘膜の中にCagAを注入して、胃壁に炎症を引き起こし、欧米型のピロリ菌より発癌性は高いとされています。
やはり、ピロリ菌感染者は、除菌しておくに越したことはないようです。
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父親の育児が増えて、B型肝炎の父子感染が増加
ピロリ菌による胃粘膜破壊の仕組みを解明
ピロリ菌:がん発症の仕組み判明 免疫細胞の酵素「AID」利用
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健康な胃では、粘膜を構成する細胞がすき間なく並んでいます。「PAR1」と呼ばれる酵素が細胞同士を結び付ける役割を果たしていますが、ピロリ菌が作り出すタンパク質「CagA」は、PAR1と結合し、その機能を阻害してしまいます。結果、隙間が出来てそこに胃酸が流れ込むと、胃炎や胃かいようが引き起こされてしまうようです。
また、通常は免疫細胞(Bリンパ球)にしかない「AID」と呼ばれる酵素を利用しているため、その作用で胃粘膜細胞が癌化してしまう、ということも突き止められています。
ピロリ菌は幼児時に経口感染し、胃に数十年すみ続け、慢性胃炎を起こします。日本では40代以上の7割が感染しているといいます。胃がんでは最も重要な発がん因子であるとされています。ですので、ピロリ菌除去が、慢性胃炎や胃癌の予防に重要であると言えると思います。
ピロリ菌感染と発癌のリスクと関連していると思われるのは、IL-1Bの遺伝子多型があげられています。IL-1Bは、インターロイキン1βをコードする遺伝子でいくつかの遺伝子多型を持ち、そのうちのC-31Tでは-31Cに比べ-31Tで発現が高いという報告があります。
インターロイキン1βはピロリ菌感染により誘導され、胃酸分泌を低下させ、ピロリ菌の感染継続に有利な状況を作り出します。C/C型およびC/T型の人に比べ、T/T型の人ではいずれの対象者についても一貫してピロリ菌抗体陽性率が高いとのことです。
また、国内にいる「アジア型」のピロリ菌は、CagAを持っており、胃に感染すると、粘膜の中にCagAを注入して、胃壁に炎症を引き起こし、欧米型のピロリ菌より発癌性は高いとされています。
やはり、ピロリ菌感染者は、除菌しておくに越したことはないようです。
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