血液製剤「フィブリノゲン」の投与でC型肝炎に感染した418人分の匿名のリスト(症例一覧表)を、厚生労働省が製薬会社から受け取りながら放置していた問題で、同省は22日、省内に保管されている書類から、感染者2人の実名と116人のイニシャルが確認できたと発表した。C型肝炎は自覚症状がない場合が多く、リスト記載者は感染の事実を知らないまま症状を悪化させている可能性がある。本人への告知を怠った当時の国の姿勢が厳しく問われそうだ。

厚労省医薬食品局によると、同省は02年4〜8月、4回にわたり三菱ウェルファーマ(現・田辺三菱製薬)から報告書の提出を受けていた。この中には、血液製剤の投与日やロット(製品単位)番号、症状などが記載された症例一覧表のほか、「医薬品副作用症例票」「『顧客の声』報告書」など個別の事例を記録した資料も含まれていた。

それらの個別資料には、個人情報を黒塗りしていないものがあり、165人分がリストの症例と突き合わせることができた。このうち2人は実名、116人はイニシャルが確認できた。医療機関名も24人分で特定できた。

黒塗りされていない資料は、厚労省側から製薬会社に提出を求めたものだったが、当時の肝炎問題に関する内部調査チームが解散し、引き継ぎがされていなかった。リスト問題が国会で追及された後の今月19日になって、職員の一人が省内の倉庫に保管されていることを思い出したという。

また、165人の投与日や症例などを分析した結果、9人は約170人が国と争っている薬害肝炎訴訟の原告である可能性が高いことが、新たに判明。このうち裁判の過程で製薬会社が投与を認めた大阪訴訟の女性原告を含む2人について、国は投与事実を証明する資料を自ら持っていながら、確認をせずに「投与の証明がない」と主張していた。
([薬害肝炎]実名2、イニシャル116人確認…経緯検証へ)


『リスト問題が国会で追及された後の今月19日になって、職員の一人が省内の倉庫に保管されていることを思い出した』とありますが、何故この時期に発表となったのか、といったタイミングのことをどうしても考えてしまいます。
最後の地裁判決である仙台地裁の後であるということや、舛添厚労相が「国として和解協議に前向きに応じていく」と考えを明らかにした後であるということ。さらに、民主党による『リスト問題が国会で追及された後』ということが、非常に大きなポイントであると思われます。

これらを照らし合わせると、国の責任を追及される可能性のあった係争中は秘匿し続け、「追求されて、もはや隠せない。原告団とは、和解ムードが出てきているし…後々バレるようだから今のタイミングで出そう」という魂胆のようなものが見え隠れします。結局の所、「引き継ぎがされていなかった」などと言っていますが、恐らくずっと隠され続けていたように思われます。

舛添厚労相は、血液製剤フィブリノゲン投与後にC型肝炎を発症した計418人の症例を国に報告したにもかかわらず、本人に告知されなかったことに対して、「これまでの国の対応が十分だったとは言えない」と述べ、事実関係を伝えるよう指導したと言いますが、それ以前に「不都合な情報を隠匿した」といった責任を考えるべきではないでしょうか。

少なくとも、今さら「(法的に可能であれば)患者の個人データを出して告知する」などと言っていますが、それで被害者達は救われるのでしょうか。責任の所存をしっかりと明確に示し、どうして情報を知りながらも告知されなかったのか、などの問題をしっかりと示すほうが重要ではないでしょうか。

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