30代、40代の働き盛りに増えている鬱病。重症化すると本人がつらいのはもちろん、企業にとっても大きなデメリットとなるだけに、予防や早期発見が求められる。そのため従業員の「心の健康」対策として「EAP」と呼ばれる支援プログラムを導入する企業が増えている。体と同じように心の健康診断を定期的に行い、鬱病などメンタル疾患の重症化を防ぐのが狙いだ。

IT企業などを中心に約60社が利用するEAPプログラム「アドバンテッジEAP」を開発・運用する東京海上日動メディカルサービスの長野展久・医療本部長は「鬱病は対応が遅れると、それだけ回復にも時間がかかる。ただ、初期の場合、家族や職場の同僚が気づかないことも少なくない」と指摘する。

同EAPは、従業員全員に対して定期的にストレステストを実施。「何でも話せる友人がいる」「上司は困ったとき話を聞いてくれる」など約100の質問項目にこたえてもらい、ストレスの高さを測定。要対応者を選別する。メールや面談でのカウンセリングを通じて本人に自身の状態に気づかせ、医療機関の受診を促し、重症化する前に治療に結びつける。
 
長野本部長は「一般的に要対応者として選別されるのは約1割。そのほとんどは自覚がないが、早期対処で病的な状態になるのを防ぐことができる」という。
 
成田国際空港株式会社は平成17年から同EAPを提供するアドバンテッジ社と契約した。総務部厚生労務グループの笹田祐爾マネジャーは「メンタル疾患に対して社員全員が興味をもってくれるようになったのが一番の成果。病気に対しての認識が高まれば、『寝付きが悪い』などの症状が続いたときに、『医師に相談してみよう』と早期の対応につながる可能性が高い」と評価する。
 
長野本部長は「メンタル疾患を自発的に相談する人はまずいないといってもいい。体と同じように心も定期的にチェックして、状況を確認するとともに、医療的な見地からの判断と介入が不可欠だ」と話している。
(“鬱病”働き盛りに急増中 心も「健康診断」必要)


EAP(Employee AssistanceProgram)とは、「従業員支援プログラム」と訳されます。
アメリカのEAP協会の定義によると、「会社の生産性に関係する事柄で、従業員に対する仕事上に影響を及ぼす個人的問題の発見、解決を援助するプログラム」のことだそうです。

70年代、アメリカで薬物依存など問題をかかえた従業員の支援対策として始まったそうです。日本では約20年前から、主にメンタル疾患の従業員対策として導入されています。普段から、従業員が抱えている悩みや、鬱をはじめとした様々な心の問題に対して解決を促す役割があるようです。

しかしながら、国内でのEAPの問題点としては、以下のようなものがあると思われます。
日本では、外部の専門家に任せずに、自社に専門のカウンセラーや相談員を設けて、
"社内EAP"とする例が多い、というケースが多いようです。社員の問題を外に漏らしたくない、といったことが原因かと思われます。

その結果としては、プライバシー確保が難しい、ということがあるのではないでしょうか。「もしかしたら上司に逐一、報告されてしまうのでは?」と思い、相談室から足が遠のく、といったことがあると考えられます。

また、社の評価を気にして、形だけEAPが設置されている、というところもあるのではないでしょうか。今後は、やはり外部機関に委託し、しっかりとしたメンタルケアができるようにすべきではないか、と思われます。

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