館林地区消防組合管内で平成18年、東京からの旅行者だった妊婦が突然体調を急変させた。旅先だったため、かかりつけの産婦人科医に行くことができず、駆けつけた救急隊は県内で搬送先を模索。8カ所の病院に相次いで受け入れを断られ、妊婦は119番通報から約1時間半後に、ようやく県外の病院に収容された。
 
県消防防災課によると、妊婦の救急搬送を断られた発生件数は同年で37件あり、1件当たりでみると前述した8回が最多だった。17年には21件、16年も16件の受け入れ拒否が起きている。
 
受け入れ拒否が発生した割合は、全体の3〜6%ほどで、「かかりつけの病院に1回で搬送されるケースがほとんど」(同課)という。搬送中に死産したり妊婦が亡くなったケースはないが、一刻を争う事態が想定されるだけに、拒否事案は決して少ない割合ではない。

受け入れ拒否が増加する背景には、産科医をはじめとした医師不足がある。県医務課によると、県内の医療機関に勤務する16年末の医師数は3908人で、14年末より33人増加した。しかし、地域や診療科によっては医師の偏在があるといい、産科と産婦人科を合わせた医師数は、14年末の181人から16年末には172人に減少した。
 
医師不足に伴い、太田市高林西町の県立がんセンターでは、常勤医が不在となったため、婦人科は10月から休診となっている。医師を派遣している群馬大学が引き揚げを決めたことなどが原因とされる。
 
16年6月から産婦人科を休診した渋川地区の中核病院「渋川総合病院」(渋川市渋川)では9月、常勤の産婦人科医を確保したものの、「医師を3人以上確保しないと産科を行うことは難しい」として、同25日に婦人科だけを再開した。内科や小児科でも、診療を実施しているとはいえ、常勤医がいない状況が続いており、医師不足は産婦人科にとどまらない状況だ。
(深刻化する医師不足)


産婦人科医の医師を派遣している群馬大学が、引き揚げを決定したことは、今年の4月に朝日新聞に取り上げられました。しかしながら、こうした大学病院も派遣先から医師を引き上げる動きは、全国的な問題となりつつあるようです。

その実情は、以下のような数字に表れています。
群馬県立がんセンターの婦人科に派遣している医師3人のうち2人を、4月に引き揚げました。すでに1月から新規の患者は受け入れていません。県内で婦人科のがんに十分対応できるのは、同センターを含め数施設となっています。

また、富山大の医局は03年以降、14ある関連病院のうち7病院への医師派遣をやめた。それでも体外受精などの不妊治療はできなくなった。

一方、札幌医大は「地域医療への貢献が大学の方針」のため、派遣している医師を引き揚げていません。しかしながら、他大学が医師を引き揚げた病院もカバーしており、02年に33人いた医局員はほぼ半減しました。

大学病院は、診療・教育・研究というの3つの役割を持っています。しかしながら、診療の業務の比重が増え、研究に時間をさけなくなったそうです。現に、2002年度以前は、10題を超えた学会での発表が、最近は4、5題と減少したそうです。結果、患者さんへの不利益が懸念されるため、非常に大きな問題であると思われます。全国的とはいえ、群馬の産科医不足はもはや火急な対策を要する問題となっているようです。

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