薬害肝炎問題をめぐり、汚染血液製剤「フィブリノゲン」を投与され、告知されずに放置されたままの418人に対し、田辺三菱製薬(旧三菱ウェルファーマ)は1日、同社が把握する197人の実名のうち、11人に告知すると厚生労働省に報告した。

418人のリストに関連する資料で同社は197人分の実名と170人分のイニシャルを把握していたことが先月22日に判明。舛添要一厚労相は葉山夏樹社長を呼び、告知を急ぐよう要請していた。31日の衆院厚生労働委員会でリスト上にある可能性が高い薬害肝炎訴訟の原告らが、同社に開示請求をしたにもかかわらず、連絡がない点に批判が集中した。

このため、厚労省は同日夕方に告知状況を報告するよう同社に要請。同社は1日に6人、2日に5人、告知する旨を厚労省に伝えた。舛添厚労相は1日午前、記者団に「こちらがお願いしたら1週間に1回は報告するのが常識。何もきていない」と、31日まで厚労省側に連絡がなかったことを認めた。

そして、「あまりにも誠意が感じられない」として薬事法に基づく報告命令を出し、週に1回、告知の進捗状況を書面で提出するよう求める方針を示唆していた。
(薬害肝炎問題 製薬会社が患者11人に告知へ)


原告団の代表が、企業に直接的に直談判をしても通知を拒否した、と報じられていました。その理由としては、「個人の特定に至らなかった」とのことです。一方、国から薬事法に基づく報告命令をちらつかせたり、舛添大臣の『(社会的責任をとらなかったら)会社は潰れます』といった発言があった後には、あっさりと11人の告知をするとしている。

こうした小出しにしていって、責任をとることを先延ばしにしている、としか考えられません。医療に携わる製薬会社としては、あってはならない態度ではないでしょうか。

そもそも、今回の問題は以下のような流れから発生しているように思われます。
今回、問題となっているのは、418人のC型肝炎患者の副作用情報をリストにする際に集められた個人情報です。リストは、薬害肝炎が社会問題化した平成14年に、厚労省の報告命令を受けた田辺三菱製薬が医療機関からの副作用報告などをもとに作成していました。

さらに、薬害肝炎訴訟の中で、原告の1人がリストの中に掲載されている人物と同一であることを製薬会社側が認めたことから、製薬会社が個人を特定する情報を持っていることが発覚しており、自ら明らかにしたものではありません。

薬害肝炎が社会問題化した平成14年の時点で、田辺三菱製薬や厚労省が、被害患者の情報を把握していながら、本人への告知を怠っていたことは元より、責任を取ろうとする動きを垣間見ることすらできない。

舛添大臣の「(社会的責任をとらなかったら)会社は潰れます」といった発言の効果がいかほどのものかは分かりませんが、真摯に受け止めていただきたく思います。

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