以下は、ザ!世界仰天ニュースで扱われた内容です。

1999年7月、アメリカ・ニューヨーク州ランカスター。こののどかな町で少年野球の試合が行われていた。ケビン・ステファン君(9歳)は、この日、弟のロビーが所属するチームのバットボーイを務めていた。両親も揃って応援に駆けつけ、大好きな兄がバットボーイを務めてくれ、張り切るロビーは大活躍。

しかし、ケビンがバットボーイとして弟ロビーのバットを拾いにグランドへ出たその時!次のバッターの少年は、後ろにケビンが近付いている事に気付かず、誤ってケビンの胸をバットで強打してしまった。ケビンはその場に倒れ、意識を失った。人々が集まり騒然とする中、ケビンの父親が胸に耳を立てると、ケビンの心臓が動いていない。ケビンは「心臓震盪」を起こしてしまった。父親は救急車を呼びに行くが、残された周囲の人たちはどうしていいか分からない。すると、一人の女性が人垣をかきわけ、慣れた手順でケビンに人口呼吸と心臓マッサージを始めた。母親と弟ロビーはケビンの名前を呼び続けた。そして3分後、ケビンは息を吹き返した。女性は看護師のペニー・ブラウンで、その日は運良く非番で、ケビンと同じチームの息子マイケルの応援に来ていた。こうしてケビンは九死に一生を得た。

それから7年後、2006年1月、ケビンも高校生になりボランティアで地元の消防団に所属し、消防団で人命救助に関する色々な技術を学んでいた。またケビンは、普段、レストランで皿洗いのバイトをしていた。そんなある日、ケビンの母親と弟ロビーが、ケビンのバイト先のレストランを訪れた。

すると、店の奥でステーキを喉に詰まらせた一人の女性が苦しんで倒れた。女性は意識がなくなりぐったりし始めた。駆けつけたケビンは、すぐにハイムリック法で救急処置を始めた。すると、女性は詰まらせていたステーキを外へ吐き出した。この時、偶然、店に居合わせたケビンの母親は、ケビンが救った女性を見て驚いた。なぜなら、たった今、ケビンが救った女性は、なんと7年前、野球場の事故の時、ケビンの命を救ってくれた看護師のペニーだったのだ。


心臓震盪は、決して珍しい事故ではありません。
心臓震盪は、胸部に衝撃が加わったことにより心臓が停止してしまう状態です。多くはスポーツ中に、健康な子供や若い人の胸部に比較的弱い衝撃が加わることにより起こります。

子供に多いのは、発育過程にあり胸郭がまだ軟らかいので、前胸部へ加わった衝撃が心臓へ伝わりやすいと考えられています。

日本でも、今年の3月に愛媛県の中学校で、開催されたサッカー大会で胸にボールを受けた当時3年生の男子生徒が心肺停止状態となるという事故がありました。結果、9日後に心不全で死亡してしまったそうです。

大阪府でも、高校で4月に野球の試合中、打球を胸に受けた2年生の投手が心肺停止状態に陥ったことがありました。ですが、こちらは幸運なことに助かっています。

実は、この2つの事件では、決定的な一つの環境の違いがありました。その違いとは、以下のようなものです。
心臓震盪は、ボールが胸を打ったことにより、「R on T」が起こり、結果として心室細動が発生してしまうことによります。R on Tとは、本来は心臓が収縮した後、休んでいるときに、「収縮しろ!」という刺激が伝わってしまう現象です。非常に危険で、致死的な心室細動を起こしてしまいます。心室細動とは、リズミカルに心臓が拍動できない状態で、全身に血液が上手く送れなくなってしまいます。

よって、心室細動に対する処置が必要なのですが、この処置として重要なのがAED(体外式除細動器)です。

実は、愛媛県の中学校にはAEDが設置されておらず、大阪の学校には設置されていました。その違いが少なからず生死に関係していたと思われます。愛媛の学校は、AEDの配備は救急車の到着まで時間がかかる地域の学校を優先し、本年度中に配備する予定だったそうです。事故後、同校にも備え付け、全教職員が講習を受けた、とのこと。

今後は、学校にAEDを設置しているところが増えていくと思われます。しっかりと講習を受けられて、生徒の命を救えるようになって欲しいと思われます。

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