以下は、読売新聞の「医療相談室」に掲載されていた内容です。

26歳の主婦の方が、「昔から白血球数が3,200〜3,800と基準値より少なく、健診では『軽度異常』と診断されていました。3年前、インフルエンザにかかった際は1,500ぐらいでした。検査数値を見るのが怖いです」とお悩みです。

これに対して、日本医科大学病院血液内科教授である檀和夫先生は、以下のように答えています。

白血球は細菌などの外敵から体を守る働きをする細胞で、基準値は血液1立方ミリ・メートル中、4,000から8,000個ですが、体に何らかの異常が起こると増えたり減ったりして基準値を外れます。

例えば扁桃炎や肺炎などの感染症、白血病などの血液の病気、心筋梗塞などで増えます。ウイルス感染症、薬の副作用、再生不良性貧血などの血液の病気などで減ります。しかし、これらの病気には、それぞれに特有な症状があり、白血球数という検査値だけの異常ということはほとんどありません。ご質問のインフルエンザはウイルス感染症であり、白血球数や血小板(出血を止める働きの細胞)数が一時的に減ることがあります。

一言で言ってしまえば、『白血球数がいつも少ないと言われても、それだけでは判断が付きませんよ。どんな疾患かは、他の症状や検査結果を調べてみないと分かりません』ということです。

何故、この質問を取り上げられたかと言いますと、同様の質問を知人からされたからです。ですが、その情報からだけでは当然、確かなアドバイスはできず、上記と同じことを話しました。

健康診断などを受けると、こうした「検査値の異常」で悩まれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。やはり、"異常"などと言われてしまうと、「何か深刻な病気でも抱えているのではないか」と思ってしまうものです。

しかしながら、「検査値が正常範囲(基準値)にない=何かの病気」ということでは決してありません。

檀先生は、さらに以下のように続けています。
健康診断や病院で行う血液検査には基準値があり、検査結果の値を基準値に照らし合わせて、正常か異常かを判断するのが一般的です。しかし、健康な人すべてが基準値の範囲内に入るのではなく、健康でも基準値から外れる人もいます。

基準値とは、健康な人の「大半」が、その範囲内にあることを示すにすぎず、基準値を少し外れていてもそれだけで病気と判断するわけではありません。病気の診断は、症状やその経過、診察や検査結果などを総合して行います。

つまり、「基準値から外れる=大半の人の値とは異なる」ということを示しているに過ぎません。当然、その項目から言えることは漠然としており、複数の判断材料がなければ、正確な診断を考えることは難しい、ということです。生理的にその人が持つ特性(個性と言い換えてもいいかもしれません)として、基準値から外れている場合、病的な意義はあまりありません。

上記の相談者のような方は、他の異常な所見がないようでしたら、病気の可能性といったことは精神衛生上、あまり心配なさらないほうが良いですね。

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