日本人の大半が子供のころに発症するといわれる水ぼうそう(水痘)。ほとんどの人は発疹と発熱で治まるのだが、実はウイルスはそのまま潜伏し、大人になってからは帯状疱疹として“悪さ”をする。さらに、大人になるまでウイルスに感染しない人もこれまで考えられていた以上に多いことが最近わかったが、こうした人が感染・発症すると重症化しやすいのだ。

水ぼうそうは感染力の強い水痘・帯状疱疹ウイルスによるウイルス性疾患で、国立感染症研究所の調べでは年間約25万人が感染。水ぼうそうは大半が5歳のころまでにかかり、その後ウイルスは体内に潜伏して、50歳以降で免疫機能が低下すると再活性化し帯状疱疹を発症する。

ところが「水ぼうそう=子どもの病気」とは言い切れない。東京慈恵医大附属青戸病院皮膚科の本田まり子教授は「これまで99%の人が大人になるまでにかかるといわれていたが、最近の研究では90%しか抗体を持っていないことが分かった」と話す。

この10%の大人が感染・発症すると重症化しやすい。成人水痘は25−29歳で発症する例が最も多く、ニキビのような発疹が出て2、3日で全身に広がり、さらに進むと38度以上の熱が出る。大人の方が重症化しやすいのは「子どもよりも免疫にかかわるT細胞の数が多いので、ウイルスに感染する量が多くなるためではないか」(本田教授)という。

子どもも重症化すると、合併症や細菌への2次感染がおきる。皮膚の下の組織が化膿したり髄膜脳炎を発症したりして、その結果、足の切断例や死亡例もあるという。こうならないためには、ワクチンを接種するか早期に抗ウイルス薬を投与するかだ。水痘ワクチンは1974年に大阪大学微生物病研究所で開発、87年には製造承認され接種が始められているが、「任意接種のため、接種率は30%弱しかない。水痘はヘルペスの中では予防・治療法がある珍しい疾患。何とか定期接種化してほしい」と藤田保健衛生大小児科の浅野喜造教授。

一方、米国では96年から定期接種化され現在は接種率90%。水ぼうそうが“過去の病気”になりつつある。「ワクチンを接種すれば100%発症を防げるわけではないが、発症しても大半は症状が軽く済む。米国では接種を受ける側も重症化を防ぐためと割り切っている」(浅野教授)

本田教授によると、成人で水ぼうそうにかかって入院が必要になると、感染力が強いため個室に入らなければならないなどの理由から20万円程度の治療費が必要になる。対してワクチンは8100−1万5000円ほどとか。ただ、ワクチン接種が普及していない現状では、「発症の初期段階で重症化するかどうかの予測が難しいため、抗ウイルス薬による早期治療が望まれる」(浅野教授)

水ぼうそうは12−1月に発症のピークを迎える。
(子どもだけじゃない大人も要注意…水ぼうそう)


水痘(水ぼうそう)とは、ヘルペスウイルス科の水痘・帯状疱疹ウイルスの初感染によります。感染経路は主に接触感染、飛沫感染であるが、空気感染も見られます。通常の潜伏期間は14〜16日といわれています。

発疹出現前に1〜2日の発熱と全身倦怠感を伴うことがありますが、子どもでは分からずに通常、発疹が初発症状となります。発疹は、全身性で掻痒を伴い、紅斑、丘疹を経て短時間で水疱となり、痂皮(かさぶた)化します。通常は最初に頭皮、次いで体幹、四肢に出現しますが、体にもっとも多くなります。

丘疹は、ウィルス感染症であるため、中心部分が凹んでいるのが特徴的です(中心臍窩)。全身に直径3〜5mm程度の丘疹(盛り上がった紅い発疹)が出現し、発疹は一斉にではなく、数日かけて続々と出現してきます。

注意すべき点としては、以下のようなことが挙げられます。
ステロイド療法中の患者や妊婦・新生児など免疫系の働きが変化している患者さんでは重症化しやすく、治癒後も神経節などに水痘・帯状疱疹ウイルスは潜伏しており、免疫低下時や疲労・ストレス時に再活性化し帯状疱疹を発症することもあるといった点です。

また、一般に1度かかると2度とかからないと言われていますが、再感染例や再発症例も上記の通り、報告されています(ただし、再発症例では、軽症の場合が多い)。

治療法としては、ほとんどの場合、重症化せずに治るので、経過観察を行いますが、病初期からのアシクロビル投与が有効とされ、フォスカルネットが用いているところもあるようです。

任意接種のため、接種率は30%弱しかないというワクチン(生ワクチン)が、今後は普及してアメリカのように「過去の病気」となれば、と思われますが、健康な方の場合は、軽症で予後は良好ということなので、なかなか現状では難しいようです。

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