以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で取り上げられていた内容です。

テレビドラマと食べることが大好きで、殆ど体を動かしていなかったH・M(58)さん。

前回の健康診断では、夫婦ともに総コレステロール値はほぼ同じ。そのため、基準値をオーバーしていたものの、夫から運動不足を指摘されても、タカをくくっていました。

ですが最近、右足だけがひどく冷えるのが気になっていました。3ヶ月後、ようやく日頃の運動不足を解消しようと夫が日課にしているウォーキングを始めることにしたH・Mさん。そんな彼女を更なる異変が襲い続けました。

彼女に起こった症状は、以下のようなものでした。
1)片足の冷え
右足だけに冷えを感じ、触れてみると冷たくなっていました。

2)足が痛んで歩けなくなる
5分ほどウォーキングしていると、ふくらはぎが痛んで、歩けなくなってしまいます。ですが、しばらく休むと、また歩けるようになります。

3)靴ずれが悪化する
ウォーキングを始めたものの、靴擦れができてしまいました。応急的に処置をしていましたが、なかなか良くならず、悪化しているように感じました。

4)眠れないほど足が痛む
ベッドに入ったものの、なかなか寝付けず、痛む右足の先を見てみました。すると、そこには黒く変色した第3〜5指がありました。

夫と慌てて病院へ駆け込むと、そこで医師からは「残念ですが、黒くなってしまった指は切断するしかありません」と告げられてしまいます。

H・Mさんが患っていた疾患は、以下のようなものでした。
H・Mさんは、閉塞性動脈硬化症という病気に罹っていました。閉塞性動脈硬化症とは、足の血管で動脈硬化が進行し、狭窄ないしは閉塞をきたすために血流が悪くなってしまう疾患です。

足の血流が悪くなってしまうことで、様々な症状が現れてきます。たとえば、初発症状の一つに、間欠性跛行というものがあります。これは、「5分ほどウォーキングしていると、ふくらはぎが痛んで歩けなくなる。だが、しばらく休むと、また歩けるようになる」という症状です。この点が、単なる冷え性と大きな違いです。ただ、動脈閉塞部位によってお尻から太ももにかけて痛みが起こってくることもあります。

そのほか、指趾(足の指)の痺れ、冷感、チアノーゼなどを伴うことがあります。

動脈閉塞が広範に及ぶと症状が高度となり、筋萎縮、阻血性潰瘍、壊死に陥ってしまうこともあります。最悪の場合、片足の切断も余儀なくされることもあります。

原因となるのは、動脈硬化です。動脈硬化のリスクファクターとしては、1)加齢、2)高血圧、3)喫煙、4)糖尿病、5)脂質異常症(高脂血症)などがあります。

最後の脂質異常症(高脂血症)に関しては、少し注意しなくてはならない点があります。総コレステロール値はH・Mさんも夫も、同じくらい高い状態でした。では、夫とH・Mさんの違いは何でしょうか?

実は、夫の場合はLDLと呼ばれるコレステロール量は、135と上限ギリギリだったのですが、基準値内でした。このLDLコレステロールとは、血管壁に溜まり動脈硬化を引き起こす、いわゆる「悪玉コレステロール」と呼ばれるものです。

一方、夫のHDLと呼ばれるコレステロール量を見ると、なんと基準値の2倍、80もありました。実は、このHDLコレステロールは「善玉コレステロール」と呼ばれ、悪玉コレステロールが血管壁に溜まらぬよう清掃車のように回収する働きがあります。

つまり夫は、大量の善玉コレステロールが悪玉コレステロールを回収していたため、動脈硬化を進行させずに済んでいたのです。ところが、H・Mさんの場合は、カロリーの高い食生活、運動不足によって悪玉コレステロール値が非常に高くなっていた一方、善玉コレステロールはごくわずかの状態でした。そのため、血管壁に溜まったコレステロールを回収できず、動脈硬化が急速に進行してしまったのです。さらに、高血糖や高血圧、喫煙習慣があったため、動脈硬化に拍車をかけてしまいました。

H・Mさんのように、「総コレステロール」のみが大事であると思いこんでしまうなど、紛らわしいため、日本動脈硬化学会が発表した新たな病名である「脂質異常症」は、「高脂血症」の診断基準の中から、総コレステロール値を削除しています。

名称を「脂質異常症」と改め、悪玉コレステロール、善玉コレステロール、中性脂肪という三つの基準が大事であると絞り込んでいます。健康診断の値を見る際には、悪玉(LDL)コレステロール、善玉(HDL)コレステロール[、中性脂肪(TG)の3つをしっかりとチェックしてみてください。

ちなみに、日本動脈硬化学会が発表した新基準によれば、LDL(悪玉)コレステロールは140mg以上、HDl(善玉)コレステロールは40mg未満、中性脂肪は150mg以上の1項目でも当てはまると、脂質異常症となっています。

また、動脈硬化のリスクファクターとなる上記のようなものは、できるだけなくすように、食生活の改善や禁煙、運動習慣をつける、といったことを心がけてみて下さい。

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