以下は、ザ!世界仰天ニュースで取り上げられていた内容です。

赤塚先生が横浜市大の血液科に勤め始めた頃、ある1人の老人が診察に来た。まだ、秋になったばかりでそれほど寒くないのに真冬のジャンパーにマフラー。

聞けば、寒気がするということで、かぜかと思い熱を計るが熱もない。よくみると顔色が悪く貧血気味なのかと思い、一応血液を調べることにした。そして、採血を行うと不思議なことに血がとれない。針に血が詰まってしまい全く取れなかったのだ。

赤塚先生は、昔勉強した時にこのような症状があることを思い出し、すぐにストーブを用意。腕を暖め採血をすると、血は採取できた。そして、検査の結果、血液中の赤血球が凝縮していたのであった。

この老人の病気は寒冷凝集素症。体温が32℃になると血が固まり、そして、解けていってしまう非常に珍しい病気。体の末端部分がこの温度になりやすく、この症状がおこると、手先・鼻先・耳先がうす黒く変色してくるのであった。後にも先にも赤塚先生にとってはじめて診た病気であった。


寒冷凝集素症(CAD)とは、寒冷凝集素という自己抗体によって、溶血性貧血を起こしてしまう疾患です。寒冷凝集素は、健康な人にも存在していますが、10℃以上では赤血球とは反応しません。しかしながら、寒冷凝集素症の患者さんでは、32℃でも赤血球と反応してしまいます。

つまり、反応温度域が正常の人の寒冷凝集素と比較して、拡大していることによって、自己免疫性溶血性貧血が起こってしまうわけです。その機序としては、glycophorin(赤血球、赤芽球の細胞膜上のグルコース輸送蛋白)の膜内立体構造の特性の変化などが考えられています。

また、寒冷凝集素症は急性型と慢性型に分かれ、それぞれの特徴は以下のようになっています。
急性型は、感染症が先行して発症しますが、その多くはマイコプラズマ肺炎あるいは伝染性単核球症(EBウイルス感染症)に合併します。

慢性型は、40歳以上に好発し、貧血は緩徐に進行し、寒冷暴露によって増悪します。上記のように、温めることで改善します。寒冷にさらされやすい耳朶、鼻頭、指趾などの身体先端部分にチアノーゼが生じやすいです。現に、上記の症例では指などにひどいチアノーゼ(手先・鼻先・耳先がうす黒く変色してくる)を呈していました。ヘモグロビン尿症(血尿)が認められることもあります。

体温が32℃になると凝血してしまう、というのは寒冷凝集素症の患者さんでは、寒冷凝集素が、32℃でも赤血球と反応してしまうからです。結果として溶血が起こってしまいます。

治療としては、寒冷を避けたり、場合によっては輸血をしたりします。根本的な治療法は今のところありません。

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