奈良、北海道では集団感染で学級閉鎖の学校も出るなど、インフルエンザが本格的に暴れ出した。ところで、インフルエンザといえば治療薬タミフルだ。特効薬と期待されながらも10代の子供たちの死亡事故が相次ぎ一転、“危険薬”のレッテルを張られた。さて今シーズン、タミフルは飲むべきか? 飲まぬべきか?

厚労省によると、01年のタミフル発売時から今年5月末までに異常な行動を報告されているのは211人、うち死亡8人。また異常行動以外の副作用をみると実に1377人が何らかの症状を訴えており、その関連による死者は71人にのぼる。

厚労省は、タミフルと異常行動の因果関係を調査する研究班を設置したが、「今年10月の時点で販売元の中外製薬が動物実験などのデータを提出したが、(因果関係は)はっきりしていない」(厚労省担当者)と明確な結論は出ていない。

これまでの調査結果をもとに来月上旬以降、安全対策調査会で何らか報告をのまとめる予定だが、「白黒はっきり結論がでるかわからない」(同)と何とも頼りない。今シーズン、タミフルは600万人分供給されるが、昨シーズンに比べれば供給量は半分だ。

とはいえ、既に流行は始まっている。家族や自分がインフルエンザに罹った場合、治療はどうするのか。タミフルの処方について厚労省では、「今年3月、10代には、投与を差し控えるように注意喚起した。今シーズンもそれを踏襲する」と説明。「注意喚起」しか手だてがないのが実情だ。

「薬を服用しないことで、体力のない幼児などがインフルエンザ脳症などにかかるリスクもある」と話すのはある小児科医。薬を服用しなかったインフルエンザ患者27人にも異常行動が見られたという報告もある。

「われわれ医療関係者はインフルエンザの治療には留意しているが、心配なのは患者さんの側。タミフルの怖さばかりが印象に残り、インフルエンザの怖さそのものについて忘れられていないか。インフルエンザは薬の服用にかかわらず異常行動が出る。お子さんが発症した場合、2、3日は十分注意してほしい」(前出の医師)

怖いのは、われわれの「喉元過ぎれば…」の意識かもしれない。
(インフルエンザ襲来「タミフル」…飲む?飲まない?)


タミフル (Tamiflu)は、一般名「リン酸オセルタミビル」といい、インフルエンザ治療薬として販売されています。A・B両型のインフルエンザに作用する(ただし、B型には効きにくい傾向がある)ことが特徴的です。

タミフルは、ノイラミニダーゼ阻害薬の一種です。ノイラミニダーゼ(インフルエンザウイルスの増殖過程において、感染細胞からのインフルエンザウイルスの脱殻に必要な酵素)を阻害することにより、インフルエンザウイルスが感染細胞表面から遊離することを阻害し、他の細胞への感染・増殖を抑制します。ノイラミニダーゼ阻害薬は、吸入剤としてリレンザが他にありましたが、シェアは3%にまで落ち込み、タミフルがシェアのほとんどを占めている現状になっています。

ただ、タミフルには上記のように異常行動を起こす可能性の他に、以下のような考慮すべき点もあります。
タミフルは海外臨床試験において、インフルエンザ発症2日以内の投与によって、発熱期間を24時間、罹病期間を26時間短縮した(服用しない場合、発熱は通常3〜7日間続く。服用した場合には2〜6日間継続へ、約1日間の改善)とのことなので、実はそんなに速効作用のあるものではありません。

たしかに、1日程度早く苦しい状態から抜け出せるのなら、ありがたい薬かも知れませんが、完全な特効薬、といった意味合いをもつものではありません。また、比較的頻度の高い副作用としては、腹痛、下痢、嘔気などがあります。

さらに、インフルエンザ治療薬タミフルに対する耐性を獲得したインフルエンザウイルスが、人から人に感染した可能性のあることを、河岡義裕・東大医科学研究所教授と菅谷憲夫・けいゆう病院小児科部長らのグループが初めて確認、米医師会雑誌に発表しています。

2004年から05年のシーズンに日本で流行したインフルエンザB型に感染した患者のうち、タミフルを飲んだ子ども74人、タミフルを飲んでいない328人(うち大人66人)からウイルスを取り出し、タミフル耐性獲得の有無を遺伝子で調べています。その結果、計422人のうち1.7%にあたる7人のウイルスから、タミフルが効きにくい遺伝子変異が見つかったそうです。

たしかに、耐性ウイルスの出現の割合は高くはなく、タミフルの使用を見直すほどではないです。ただ、人から人へと感染したとみられることから、耐性ウイルスの拡大を注意深く監視していく必要があります。

インフルエンザ自体にも、インフルエンザ脳症など、注意すべき症状があります。タミフルの使用もそうですが、お子さんがインフルエンザに罹った場合は、しっかりと看ていてあげてください。

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