北京五輪を前に急激な経済発展を続ける中国で、日本企業の中国駐在員やその家族に心の問題をかかえる人が増えている。慣れない海外生活と急変する社会の流れについてゆけず、心を病むケースが多いとみられる。
 
外務省によると、中国に住む日本人は12万5000人(平成18年10月1日現在)で、5年前に比べ倍増。日本語の分かる医師がいるメンタルクリニックを受診する日本人は前年より10〜20%増えている。
 
心療内科を標榜するVISTAクリニック(北京市)は全患者の3割が日本人。1年前に比べ20%ほど受診者が増えており、適応障害や鬱病、不安神経症での受診が多いという。龍頭クリニック(同)は、全体の1割が心療内科の患者で、日本人駐在員では環境と仕事のストレスからくる鬱病や不安神経症で受診するケースが多い。
 
昨年3月まで中国の日本大使館で医務官をしており、現在も現地で状況を調査している精神科医の勝田吉彰・近畿福祉大教授は「中国の駐在員には“海外生活初心者”の割合が高く、気候や風土、社会制度の違いなど慣れない海外生活が大きなストレスになっている」と指摘している。
 
調査によると、駐在員はストレス要因として、日本の本社の認識と現実との乖離をあげる人が多いという。欧米企業の参入や政府の政策変更で状況が一変することは珍しくない。売り上げや利益確保を本社から強く言われ、精神的に追いつめられてしまう人が少なくないという。
 
また、食の安全確保に多大なエネルギーを費やすことになる。中国の残留農薬問題や重金属による水質汚染問題は深刻だ。そんな中、安全な食材探しに奔走することになる。ただ、農薬の心配のないキャベツは1玉が日本円で約300円もするなど、日本よりはるかに高い。しかも、欧米に比べ物価が安い中国では手当ては低く、経済的な出費も負担になっている。
 
勝田教授は「中国での生活は日本で考える以上に大きなストレスがかかる。駐在員をおいている企業は、精神科医やカウンセラーを定期巡回させるなど、なんらかの対応をとることが必要ではないか」と話している。
(中国の日本人駐在員に「心の病」増加)


うつ病とは、気分障害の一種であり、抑うつ気分や不安・焦燥、精神活動の低下、食欲低下、不眠などを特徴とする精神疾患です。あまり生活に支障をきたさないような軽症例から、自殺企図など生命に関わるような重症例まで存在します。うつ病を反復する症例では、20年間の経過観察で自殺率が10%程度とされています。

生涯のうちにうつ病にかかる可能性については、近年の研究では15%程度と報告されています。日本で2002年に行われた1600人の一般人口に対する面接調査によれば、時点有病率2%、生涯有病率6.5%とされています。決して人ごとではないと思われます。

国内ではここ数年、鬱病などの精神疾患で休職するケースが増えています。独立行政法人「大阪産業保健推進センター」が府内の企業468社について過去5年間の休職者の実態を調査したところ、精神疾患のため休職した労働者は、12年度は337人だったが、16年度には約3.5倍の1190人に急増。従業員300人未満の中小企業(153企業)に限ると、12年度の2人から16年度は3倍の66人に増えていたそうです。

また、東京地裁が先ごろ、パワーハラスメントによる自殺の労災を初めて認定して注目されました。実際、サラリーマンの職場環境は深刻化しているといえるのではないでしょうか。上記ニュースのように海外で生活し、働くとなればよりストレスとなってくると思われます。

社団法人日本産業カウンセラー協会では、「自殺予防週間」の9月10〜16日、日本労働組合総連合会とともに全国で「働く人の電話相談室」を実施したところ、20代から70代まで計430件の相談が寄せられ、産業カウンセラーらが対応しました。

寄せられた悩みは、「職場の問題」が30.7%と最も多く、以下、「メンタル不調・病気」(17.6%)、「家庭の問題」(13.3%)、「生活全般」(10.5%)だったそうです。具体的な内容としては、上司によるパワハラに関する相談が多数あったといいます。こうしたことが職場において、大きな問題となっていると考えられます。

最近では、企業も従業員のメンタルヘルスを保つため、以下のような方策を採っているそうです。
30代、40代の働き盛りに増えている鬱病は、重症化すると本人がつらいのはもちろん、企業にとっても大きなデメリットとなるだけに、予防や早期発見が求められます。そのため従業員の「心の健康」対策として「EAP」と呼ばれる支援プログラムを導入する企業が増えています。

EAP(Employee AssistanceProgram)とは、「従業員支援プログラム」と訳されます。
アメリカのEAP協会の定義によると、「会社の生産性に関係する事柄で、従業員に対する仕事上に影響を及ぼす個人的問題の発見、解決を援助するプログラム」のことだそうです。

70年代、アメリカで薬物依存など問題をかかえた従業員の支援対策として始まったそうです。日本では約20年前から、主にメンタル疾患の従業員対策として導入されています。普段から、従業員が抱えている悩みや、鬱をはじめとした様々な心の問題に対して解決を促す役割があるようです。

今後、こうしたメンタルヘルスにおけるケアは、労働環境を整える上で、必要不可欠となっていると思われます。

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