薬害C型肝炎訴訟で、13日に大阪高裁の和解骨子案が提示されることを受け、薬害肝炎全国原告団などは9日、東京都内で会議を開き、投与時期や製剤の種類などによって救済対象となる患者を線引きする内容が提示されれば、和解案には応じないことを正式決定した。

会議には原告ら約80人が出席。弁護士から11月7日の大阪高裁による和解勧告後の国の主張や、交渉の経緯などの説明があったという。

これまでの交渉で国側は、法的責任を認める期間を昭和62年から63年に限定したい意向を伝えている。和解後に薬害を訴えた人には、法的責任を認めた期間内に肝炎となった場合に限定して補償したい考え。だが、未提訴の患者の一部が救済されない恐れがあり、原告側は未提訴者を含めた被害者全員の「一律救済」を求めている。

会議後の会見で、同原告団代表の山口美智子さんは患者の線引きの可能性がある骨子案について、「線引きは全員救済という理念に反する。国の主張は絶対に受けられない。同じ被害を受けた人は同じ救済を受けるのは当然」と強調した。

大阪高裁は6日、当初は7日に公表するとしていた和解骨子案について、13日午後、正式に当事者に交付すると発表している。
(和解骨子案の拒否を正式決定 薬害肝炎原告団)


薬害肝炎とは、血液凝固因子製剤(非加熱第IX因子製剤であり、第?因子欠損がみられる血友病などで用いられます)の投与により、C型肝炎の感染被害がでたことを指します。現在の三菱ウェルファーマの試算によれば、フィブリノゲン製剤の推定投与数は約29万人であり、推定肝炎発生数1万人以上とされています。

薬害肝炎の原因となった血液製剤は、"フィブリノゲン製剤"と"第IX因子製剤"という血液凝固因子製剤であると、患者側は主張しています。

"フィブリノゲン製剤"では、非加熱フィブリノゲン製剤「フィブリノゲン−ミドリ」およびウイルス不活化対策として乾燥加熱処理がなされた製剤「フィブリノゲンHT−ミドリ」により、薬害肝炎が発生したと考えられています。現在では、乾燥加熱処理と界面活性剤処理が施されており、薬害肝炎の原因とはなっていない、とされています。

"第IX因子製剤"には、「クリスマシン」と「PPSB−ニチヤク」があります。血友病Bの治療薬だけでなく、新生児出血(メレナなど)にも使われていたそうです。

1985年にウイルス不活化処理がなされた加熱製剤に切り替えられましたが、その後も非加熱製剤の自主回収が行われなかったことから、1988年頃まで臨床現場で使用されていたことです。また、厚労省のリストによれば、20年前に既に薬害肝炎の存在が指摘されていたケースもあったそうです。問題を知りながらも、警告をしなかったとなれば、国・製薬会社の責任は非常に重いと思われます。

訴訟に関しては、
・大阪及び福岡地裁→主張を退けた。
・東京地裁→製薬会社の責任が認められた。
・名古屋地裁→国および製薬会社の責任を認める。
・仙台地裁→主張を退ける。

という判決が下され、地域によって別れています。
もしこの事実が明らかとなれば、裁判の結果も変わってくると思われます。

さらに、国の責任として問われているのは、以下のような事柄があります。
418人のC型肝炎患者の副作用情報を収集にする際、集められた個人情報リストがありました。このリストは、薬害肝炎が社会問題化した平成14年に、厚労省の報告命令を受けた田辺三菱製薬が医療機関からの副作用報告などをもとに作成していました。

さらに、薬害肝炎訴訟の中で、原告の1人がリストの中に掲載されている人物と同一であることを製薬会社側が認めたことから、製薬会社が個人を特定する情報を持っていることが発覚しており、自ら明らかにしたものではありません。

薬害肝炎が社会問題化した平成14年の時点で、田辺三菱製薬や厚労省が、被害患者の情報を把握していながら、本人への告知を怠っていたことは元より、責任を取ろうとする動きを垣間見ることすらできないと言わざるを得ません。

厚生労働省が平成13年に実施した感染調査の中で、肝炎感染の疑いがある人に対し、手紙や電話連絡で検査受診を呼びかけていたことも明らかになっています。翌14年に、一部実名を含む418人分の薬害肝炎副作用リストを把握した際には、患者へ連絡していませんでした。また、その後にこのリストが地下に放置され、後任者へしっかりと伝達されていないことでも大きな問題となりました。

結果、「患者の視点に立ち(告知の)配慮があってしかるべきで、反省すべきだ」と国側の落ち度を認める報告書をまとめていますが、一方で、告知しなかった責任は「あるとまでは言い切れない」と否定しています。

これで患者側が納得するのか、と言われれば疑問を抱かざるを得ない報告ではないでしょうか。少なくとも、国民の健康を預かる行政としては、あってはならない態度であると思われます。

今後、訴訟を含む司法での争いを含めた展開も視野には入っているでしょうが、そうなる前に、国の責任をしっかりと認め、薬害によってC型肝炎に感染してしまった人たちの救済を求めたいと思います。

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