以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

大手化粧品メーカーで働くT・S(28)さんは、入社6年でチームリーダーになったキャリアウーマン。しかし、仕事に熱中するあまり2年間も彼氏がなく、なんとか20代でゴールインするのを目標にしていました。

そんな中、外資系のエリートサラリーマンとの合コンを1ヶ月後に控え、ダイエットを始めました。まずはご飯などの炭水化物、お肉を一切摂らず、サラダばかりを食べるといったことを始めました。しかし、思うように減らなかったため、一日一食の食事、しかも、もずくのような海草類ばかりを食べるようになりました。

右の鎖骨の辺りに小さなしこりがあることに気付いたT・Sさん。その後も様々な異変が彼女に襲いかかりました。
1)首のしこり
お風呂上がりに化粧水をつけていたときに、不意に頚に(鎖骨の上辺り)しこりを感じました。痛みはなく、触ると軟らかいしこりでした。

2)寝汗
朝起きると、風邪を引いているときのように、ひどい寝汗をかいていました。

3)微熱
寝汗がひどく、熱っぽかったので体温計で測ってみたところ、37.1℃と微熱がありました。

4)しこりが赤く腫れる
頚のしこりを発見して、しばらく経ってから赤く腫れているのをみつけました。場所は同じく、鎖骨の上あたり。相変わらず痛みや痒みもなく、触ると軟らかいしこりでした。

5)頭痛
気に入った男性に会って、しばらくたってもダイエットを続けていました。その後、朝起きるとひどい頭痛を感じました。

6)嘔吐
頭痛を感じ、立ち上がるとふらつきました。そして、耐えきれないほどの吐き気を催してトイレに駆け込み、嘔吐をしてしまいました。

頭痛や吐き気、ふらつきを感じて、「これは普通ではない」と感じたT・Sさん。救急車を呼ぶことにしました。しかし、電話で症状を訴えるのかと思いきや、「あの企画書、見ていただけましたか?」と支離滅裂な受け答えをしてしまいます。そして、立っていられずその場に倒れ込んでしまいました。

その後、救急車に乗って病院に運ばれたT・Sさん。懸命な治療の甲斐無く、28歳という若い命を落としてしまうことになってしまいました。

T・Sさんの命をむしばんだ病気の正体は、以下のようなものでした。
T・Sさんは、「結核性髄膜炎」を患っていました。
「結核性髄膜炎」とは、結核菌への感染が原因で、脳の髄膜が炎症を起こす疾患のことです。最初の内は微熱、腹痛、食欲不振、体重減少など非特異的なものがありますが、T・Sさんのようにあっという間に症状が進行し、最悪の場合、死に至ってしまう可能性もあります。

「結核性髄膜炎」は、糖尿病などの基礎疾患をもち、感染に対する抵抗力の低下している症例などに起こりやすいといわれています。T・Sさんの場合も、無理なダイエット(片寄った食事などによる)によって、免疫力が低下していたことが原因であると思われます。結核の専門機関である結核予防会も、極端なダイエットは、結核を発病しやすくする危険な条件の一つとして警告しているそうです。

結核菌は鼻から侵入し、肺の奥深くにある肺胞にまで到達します。健康な人の場合、ここで免疫細胞がいっせいに集まり、結核菌を取り囲んで封じ込めてしまいます。ところが彼女の場合、免疫力が低下していたために、結核菌を増殖させてしまったと考えられます。

T・Sさんの場合も、免疫力の低下に伴い、免疫細胞の殺菌力も低下。結核菌は次々と増殖し、ついには免疫細胞を破壊。そして増殖した結核菌が、再び免疫細胞に取り囲まれ移動し、肺から鎖骨の上のリンパ節まできたと考えられます。ここでも結核菌は、次々と増殖し、ついに結核を発病してしまいました。T・Sさんに現れたあの首のしこりこそ、リンパ節に侵入した結核菌が増殖していたサインであり、「結核性リンパ節炎」と呼ばれます。

結核のうち、結核性リンパ節炎は肺外結核の約30%とされ、その70%が頸部に出現するとされるといわれています。また、頸部リンパ節炎の5%が結核性であり、結核菌が咽喉頭からのリンパの流れに入って、頸部リンパ節に至ったものとされています。

原因はわかっていませんが、結核の中でも特に若い女性に多いといわれています。しかし、結核だとは知らずに首のシコリをそのまま放置し、無理なダイエットを続けてしまいました。結果、リンパ節の中で、結核菌が一層増殖し、赤く腫れるまでになってしまいました(自潰して瘻孔を形成)。それでも病院を訪れることなく、偏ったダイエットを続けてしまったT・Sさん。

その後、増殖した大量の結核菌は、血流に乗って脳の髄膜にまで到達し、ついに髄膜炎を発症してしまったのです。髄膜炎を発症して頭蓋内圧が亢進し、結果として頭痛や吐き気を感じたわけです。

結核は、毎年2万6千人もの新しい患者が発病しています(2006年統計)。さらに発病していなくとも、感染している人の数となると、推定で2,500万人以上に達するとも言われています。かつては年間10万人が死亡していたこの病も、薬の発達や栄養状態の改善によって、発病にまで至る人は着実に減り続けてきました。ですが、無理なダイエットなどで、免疫力を低下させてしまう人もいます。

同様な症状がみられた人は、お気をつけ下さい。そして、すみやかな受診をお勧めいたします。

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