以下は、ザ!世界仰天ニュースで取り上げられていた内容です。

アメリカ・ミネソタ州セントポール。大学時代に結婚したジムとアンのユーチェク夫婦は、5人の子供に恵まれていた。そして1989年8月3日、6番目の子供が誕生した。

しかし、ベッカと名づけられたその子は、産声もあげず、ぐったりとした様子。すぐにICUで精密検査が行われた。そして診断された結果はヌーナン症候群。この病気には有効な治療法はなく、ベッカは合併症から呼吸困難になっていた。そして治療費を捻出するため家族の努力が始まった。ベッカは24時間体制の治療を受けているためその費用は月に数百万円以上かかっていた。

会社の入っていた民間保険会社によって、その支払いはなされていたが、あまりにも高額な治療費に、保険会社は掛け金のアップを要求。しかし、ジムの働いていた会社の社長は、受け入れることが出来なかった。結果、保険会社からの支払いはみこめなくなってしまった。

何か治療費の捻出が出来ないかと、市役所に相談に行ったところ、ミネソタ州では低所得者向けの医療費支援を行っていると判明。治療費のめどが立った。しかしながら、その制約として、月収が900ドル以下でなくてはならないと言われてしまう。個人で契約するため、州が運営している低所得者用の保険に加入しようと考えたが、加入条件が月々の収入を、現在の1800ドルから半分以下にしなければならない。だが、闘病中の娘の命には代えられない。家のローンが毎月800ドル、900ドルでは生活費が100ドルになってしまう。それでもベッカを救うため一家は収入を900ドルに抑えることにした。

ジムは、社長に給料を900ドルにして貰うように交渉した。結果、いままでもぎりぎりだった生活費を、さらに切りつめなくてはならなくなった。幼い子供たちの欲しいものを買ってやることもできなかった。ベッカへの治療が続く中、満足な食事を子供達に与える事も出来ない生活が続き、一家はガスや電気まで止められた。

「クリスマスプレゼントも用意できない…」その様子を察知してか、子供たちは「サンタさんに、ベッカが元気になることをお願いした」とジムたちに話した。そこで、クリスマスイブにみんなで病院にいるベッカに会いに行くことにした。

その帰り道、家の前に奇妙なものが置いてあるのを発見した。それは、一杯になっているゴミ袋。それが玄関のドア前にうず高く積まれていた。「俺たちが何をしたって言うんだ…」ジムは、苛立ち紛れにそれを退かしたが、それはゴミなんかではなかった。衣類や食料、子供たちへのクリスマスプレゼントなどが入っていた。メッセージカードには、「サンタはあなた達を愛しています」という言葉が添えられていた。

誰からのプレゼントなのか、それは分からなかった。だが、久しぶりに幸福な気分になりながら夜を過ごすことが出来た。そして明くる日、止められていたはずの電気やガス、電話が元通りになっていた。見知らぬ誰かが、滞っていた料金を支払ってくれたという。そして、まるで子供たちの願いを叶えるかのように、ベッカは次第に元気を取り戻し、順調に回復していった。結果、栄養チューブははずせなかったが、退院して一緒に暮らせるまでになった。

その後、近所の人たちや同僚たちのカンパによって支えられ、平穏に暮らすことが出来た。しかし、一方でジムは「自分はもう、必要とされなくなったのではないか」と落ち込むことが多くなった。そして、仕事にも意欲が湧かず、退職して閉じこもるようになってしまった。

「何もやらないのなら、家を出ていって!」という、アンの言葉に促されるようにして家を出ようとしたジム。だが、それを子供たちが引き留めた。そしてジムは一念発起し、朝はアンと供に新聞配達のバイトを行う傍ら、大学に通うことにした。

6年後、大学を卒業して、ジムは医師として働いている。ベッカは現在18歳で、元気に過ごしているという。そして、安定した生活を送れるようになり、いつの日にかプレゼントを置いていってくれた人のために、彼らは5人の養子をもらい、育てることにした。


ヌーナン(Noonan)症候群は、先天性心疾患、成長障害、特徴的顔貌、骨格異常、精神運動発達遅滞、血液凝固障害、リンパ管形成障害、停留精巣などを特徴とする先天異常症候群のことをいいます。ベッカちゃんの場合、免疫障害やブドウ球菌の感染症なども合併していたようです。

1963年にNoonanらが最初に記載した。Turner症候群に似た身体所見から「男性Turner」といわれた時期もありましたが、現在では男女両性にみられ、遺伝する場合は常染色体性優性遺伝であるといわれていますが、孤発性のものも多いようです(ベッカちゃんの家族では当てはまらず、孤発性であると考えられます)。アメリカでは、1000〜1500人に1人の罹患率とされ、先天異常症候群の中では最も多いそうです。日本では1万人に1人程度だそうです。

12番染色体長腕にある責任遺伝子PTPN11が同定され、約半数の症例で遺伝子変異が同
定されています。ただし、変異が同定できない場合でも否定はできません。

症状としては、以下のようなものがあります。
新生児期の哺乳障害、頻回の嘔吐のため、チューブ栄養を要するケースがあるようです。ベッカちゃんの場合も、逆流性に嘔吐してしまうため、噴門部(胃の入り口です)を閉鎖し、チューブで流し込む、という方法を採っていました。成長障害も見られ、欧米の報告では成人男性は161〜163cm、女性は151〜153cm程度と、かなり小柄であると報告されています。ベッカちゃんも両親に比べ、小柄な印象でした。

特徴的顔貌があり、額が突出して、目の間が離れていたり、耳介の位置が下にある、カールした頭髪…などがみられるそうです。ですが、成人期には特徴は薄れて、普通の人と変わりありません。思春期の頃では、前頭部は広く、下顎が細く見えるようになるそうです。

先天性心疾患も50〜90%のケースでみられ、肺動脈弁狭窄や肥大型心筋症がみられるそうです。他にも、斜視や屈折異常といった眼科疾患がみられることもあります。

治療としては、個々の症状に対して対症的に行われます。たとえば、ベッカちゃんの場合は、哺乳障害、頻回の嘔吐のためチューブ栄養を行わなくてはなりませんでした。

それにしても、決して諦めなかった両親や子供たちの願いが通じたとしか思えません。そして、温かく家族を支えてくれた人たちがいることに、救いを感じました。現在、こうした難病で苦しむ子供たちにも、奇跡が起こることを願ってやみません。

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