いま最も心配されているのが、致死率が高く全身感染をもたらす「高病原性H5N1強毒性鳥インフルエンザ」が、人に感染する新型インフルエンザとなること。もともと鳥のウイルスのため、免疫をもつ人はほとんどおらず、このウイルスにさらされるとほぼ100%感染する。しかも免疫がない分、重症化しやすい。最悪の場合、日本で210万人、全世界で1億4200万人の死亡者が出るとの推計もある。
それでも新型をこれまでのインフルエンザの延長線上にあるものとして、「自分は若いから大丈夫」と考えている人も多い。しかし、国立感染症研究所の研究員、岡田晴恵さんは「新型と通常のインフルエンザはまったく別物と考えてほしい」とくぎをさす。
通常のインフルエンザは健康な大人が死ぬことはほとんどないが、新型は若者や働き盛りの中高年層にもたくさんの死亡者がでる可能性が高いためだ。岡田さんは新型インフルエンザの脅威を小説風に描いた『H5N1』などを出版し、警告を発している。
米国では2003年からホワイトハウス主導で対策がとられており、国家安全保障会議での対応が進んでいる。日本でも今年3月、新型発生に備えたガイドラインを策定、厚生労働省のホームページで公開しているが、見たことのある人はどれくらいいるだろうか。
岡田さんは「新型の発生はすでに“いつ起こるか”の問題となっており、予断を許さない。自分や家族の命を守るために、家庭でも対策をとることが大切」と話す。
新型への対策は、ウイルスに感染しないことしかない。そのために、発生したら、ウイルスにさらされる可能性のある場所に近づかないこと。外出しないのが一番だが、外出したときは帰宅後の手洗い・うがいはもちろん、洗顔・洗髪も行い、家の中にウイルスを持ち込まないようにする。
実際に流行が始まれば、病院は患者であふれ、食品や日用品の流通が滞り、電気やガス、水道などのライフラインにも影響が出る可能性もある。流行がおさまるまで、最低でも2カ月はかかるといわれ、その間を生き抜くための食料や日用品、医薬品の備蓄が必要だ。
基本的には地震などの災害に備えるものと同じでいいが、被災地以外からの救援物資が期待できる地震などの災害と違い、新型インフルエンザは、海外を含めて外部からの援助は全く期待できないことを考慮する必要がある。
岡田さんは「1918年に世界的に大流行したスペイン・インフルエンザでは、感染を免れたのに食糧が手に入らず餓死した人もいた。おおげさに思うかもしれないが、流行が始まったときに外出せずにすむよう食料・日用品の備蓄は絶対必要。一人一人が危機意識をもって十分な準備をしてほしい」と呼びかけている。
(新型インフルエンザ 未知の脅威、危機管理を)
トリインフルエンザとは、A型インフルエンザウイルスが鳥類に感染して起きる鳥類の感染症です。中でも、ニワトリなどの家禽類に感染して、宿主を死に至らしめる高病原性トリインフルエンザが問題となっています。
今年も、宮崎県清武町や日向市、岡山県高梨市などでH5N1型高病原性トリインフルエンザウイルスが多数の鶏に感染し、殺処分されたことがあり、記憶に新しいのではないでしょうか。
ヒトのインフルエンザの原因になるウイルス(ヒトインフルエンザウイルス)と、トリインフルエンザの原因になるウイルス(トリインフルエンザウイルス)では、感染対象となる動物(宿主)が異なるため、一般的にはトリインフルエンザウイルスがヒトに感染する能力は低く、また感染してもヒトからヒトへの伝染は起こりにくいと考えられています。ですが、大量のウイルスとの接触や、宿主の体質などによってヒトに感染するケースも報告されています。
トリ用ワクチンは開発されていますが、感染予防には完全ではなく、ニワトリの感染を完全回避はできず、感染しても発症を低減できるのみとされています。そのため、ワクチンによる完全な予防は難しいと考えられます。
トリ型のインフルエンザウイルスのポリメラーゼ(相補的な塩基配列を持つ遺伝子を合成する酵素)は、高温でよく働く構造になっています。人間の体温は36〜37度ですが、鳥の体温は42度前後と人間より高い。そのため、この体温の差によって、感染しにくいと考えられていました。しかしながら、トルコで見つかったH5N1型鳥インフルエンザウイルスなどでは、人間の低い体温(36度)でも働くような変異が起こっていたのではないか、と考えられています。
こうしたことを考えると、上記のようなことが杞憂とばかりもいっていられないように思います。政府レベルや国を越えたボーダーレスの対応が求められています。
また、予防には以下のような事柄が大切であると言われています。
それでも新型をこれまでのインフルエンザの延長線上にあるものとして、「自分は若いから大丈夫」と考えている人も多い。しかし、国立感染症研究所の研究員、岡田晴恵さんは「新型と通常のインフルエンザはまったく別物と考えてほしい」とくぎをさす。
通常のインフルエンザは健康な大人が死ぬことはほとんどないが、新型は若者や働き盛りの中高年層にもたくさんの死亡者がでる可能性が高いためだ。岡田さんは新型インフルエンザの脅威を小説風に描いた『H5N1』などを出版し、警告を発している。
米国では2003年からホワイトハウス主導で対策がとられており、国家安全保障会議での対応が進んでいる。日本でも今年3月、新型発生に備えたガイドラインを策定、厚生労働省のホームページで公開しているが、見たことのある人はどれくらいいるだろうか。
岡田さんは「新型の発生はすでに“いつ起こるか”の問題となっており、予断を許さない。自分や家族の命を守るために、家庭でも対策をとることが大切」と話す。
新型への対策は、ウイルスに感染しないことしかない。そのために、発生したら、ウイルスにさらされる可能性のある場所に近づかないこと。外出しないのが一番だが、外出したときは帰宅後の手洗い・うがいはもちろん、洗顔・洗髪も行い、家の中にウイルスを持ち込まないようにする。
実際に流行が始まれば、病院は患者であふれ、食品や日用品の流通が滞り、電気やガス、水道などのライフラインにも影響が出る可能性もある。流行がおさまるまで、最低でも2カ月はかかるといわれ、その間を生き抜くための食料や日用品、医薬品の備蓄が必要だ。
基本的には地震などの災害に備えるものと同じでいいが、被災地以外からの救援物資が期待できる地震などの災害と違い、新型インフルエンザは、海外を含めて外部からの援助は全く期待できないことを考慮する必要がある。
岡田さんは「1918年に世界的に大流行したスペイン・インフルエンザでは、感染を免れたのに食糧が手に入らず餓死した人もいた。おおげさに思うかもしれないが、流行が始まったときに外出せずにすむよう食料・日用品の備蓄は絶対必要。一人一人が危機意識をもって十分な準備をしてほしい」と呼びかけている。
(新型インフルエンザ 未知の脅威、危機管理を)
トリインフルエンザとは、A型インフルエンザウイルスが鳥類に感染して起きる鳥類の感染症です。中でも、ニワトリなどの家禽類に感染して、宿主を死に至らしめる高病原性トリインフルエンザが問題となっています。
今年も、宮崎県清武町や日向市、岡山県高梨市などでH5N1型高病原性トリインフルエンザウイルスが多数の鶏に感染し、殺処分されたことがあり、記憶に新しいのではないでしょうか。
ヒトのインフルエンザの原因になるウイルス(ヒトインフルエンザウイルス)と、トリインフルエンザの原因になるウイルス(トリインフルエンザウイルス)では、感染対象となる動物(宿主)が異なるため、一般的にはトリインフルエンザウイルスがヒトに感染する能力は低く、また感染してもヒトからヒトへの伝染は起こりにくいと考えられています。ですが、大量のウイルスとの接触や、宿主の体質などによってヒトに感染するケースも報告されています。
トリ用ワクチンは開発されていますが、感染予防には完全ではなく、ニワトリの感染を完全回避はできず、感染しても発症を低減できるのみとされています。そのため、ワクチンによる完全な予防は難しいと考えられます。
トリ型のインフルエンザウイルスのポリメラーゼ(相補的な塩基配列を持つ遺伝子を合成する酵素)は、高温でよく働く構造になっています。人間の体温は36〜37度ですが、鳥の体温は42度前後と人間より高い。そのため、この体温の差によって、感染しにくいと考えられていました。しかしながら、トルコで見つかったH5N1型鳥インフルエンザウイルスなどでは、人間の低い体温(36度)でも働くような変異が起こっていたのではないか、と考えられています。
こうしたことを考えると、上記のようなことが杞憂とばかりもいっていられないように思います。政府レベルや国を越えたボーダーレスの対応が求められています。
また、予防には以下のような事柄が大切であると言われています。
英国医師会誌「British Medical Journal(BMJ)」に掲載された過去の51研究のレビュー(再調査)で示された結果によると、「インフルエンザをはじめとする呼吸器系ウイルスを予防するには、薬剤よりも手洗いやマスク着用などの物理的な防御法が有効」とのことです。
呼吸器系ウイルスの動物からヒト、ヒトからヒトへの伝播を防ぐ措置である、"隔離、社会的距離の確保、遮断、個人的な予防措置および衛生対策"を、その他の措置または何もしない場合と比較したそうです(この中に抗ウィルス薬やワクチンは含まれていなかったそうですが)。
結果、手洗いおよびマスク、手袋、ガウンの着用は、呼吸器系ウイルス蔓延の予防にそれぞれ単独で有効であり、すべてを併用すればさらに高い効果が得られることがわかったそうです。
インフルエンザ患者の咳や、痰の飛沫に便乗したウイルスは空中を漂った後、直接または間接的に別の人の気道粘膜に侵入します。この間接経路に、実は「手」が重要な役割を演じます。というのも、咳をする時はエチケットして、手で口をおさえますが、その手で電車のつり革や手すりをはじめいろいろのものに触れます。そのため、手を介して粘膜感染してしまう、ということがあるわけです。
粘膜にたどり着いたウイルスは、すぐに粘膜細胞内に侵入してしまうので、うがいよりも手洗いによって入ってくるのを予防する、というほうが有効であると考えられます。同様に、風邪の感染予防にも重要であると考えられます。
手を洗う際は、消毒タイプで液体のせっけんが最適であると考えられています(キレイキレイなど)。指先の爪の間や指の間などもしっかりと洗うように心がけましょう。帰ってきたら、まずは手洗いうがい、というのはしっかりと習慣にするべきですね。
【関連記事】
インフルエンザに関するまとめ
インフルエンザやSARSにも 感染予防には薬より手洗いを
呼吸器系ウイルスの動物からヒト、ヒトからヒトへの伝播を防ぐ措置である、"隔離、社会的距離の確保、遮断、個人的な予防措置および衛生対策"を、その他の措置または何もしない場合と比較したそうです(この中に抗ウィルス薬やワクチンは含まれていなかったそうですが)。
結果、手洗いおよびマスク、手袋、ガウンの着用は、呼吸器系ウイルス蔓延の予防にそれぞれ単独で有効であり、すべてを併用すればさらに高い効果が得られることがわかったそうです。
インフルエンザ患者の咳や、痰の飛沫に便乗したウイルスは空中を漂った後、直接または間接的に別の人の気道粘膜に侵入します。この間接経路に、実は「手」が重要な役割を演じます。というのも、咳をする時はエチケットして、手で口をおさえますが、その手で電車のつり革や手すりをはじめいろいろのものに触れます。そのため、手を介して粘膜感染してしまう、ということがあるわけです。
粘膜にたどり着いたウイルスは、すぐに粘膜細胞内に侵入してしまうので、うがいよりも手洗いによって入ってくるのを予防する、というほうが有効であると考えられます。同様に、風邪の感染予防にも重要であると考えられます。
手を洗う際は、消毒タイプで液体のせっけんが最適であると考えられています(キレイキレイなど)。指先の爪の間や指の間などもしっかりと洗うように心がけましょう。帰ってきたら、まずは手洗いうがい、というのはしっかりと習慣にするべきですね。
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