2005年に世界初の顔面移植を受けたフランス人女性イザベル・ディノワールさんが、手術後1年半で機能的にも見た目にも満足できる状態に回復したとの治療結果を、医師団が13日付の米医学誌に発表した。

同誌で写真を公開、ほおに残った傷跡も化粧すれば目立たなくなり、医師団は「ひどい損傷を受けた患者に希望のある治療法だ」と結論付けた。

ディノワールさん=当時(38)=は2005年5月に飼い犬に鼻と唇、あごを食いちぎられ、同年11月に脳死になった46歳の女性から提供された顔の皮膚や筋肉を移植する手術を受けた。

最初は発音や飲食にも苦労したが、手術後3ヶ月でPやBといった唇を使う発音ができるようになり、1年後には飲み物をこぼさずに飲めるようになった。軽い触覚や熱さ、冷たさの感覚が戻ったのは半年後。1年半後には笑顔が左右対称になったという。

拒絶反応が2回起きたが、免疫抑制剤を増量することなどでしのいだ。
機能回復で手術結果を心理的にも受け入れられるようになり「街を歩いたり、パーティーに出席するのも怖くないと言っている」としている。
(世界初の顔面移植女性「機能も見た目も回復」)


ディノワールさんの場合、提供者の鼻や口の部分を中心に皮膚や皮下組織、筋肉、血管などを移植したそうです。

それならば、自身の一部の筋肉を使用すればいいのではないか、と思うかもしれません。ですが、顔の一部移植は患者自身の背中や尻、ももの皮膚や筋肉を利用して以前は手術が行われていたそうですが、皮膚が乾いたり、十分に機能しないなどの問題があったそうです。やはり、十分な機能や美容面での問題を克服するには、顔面の移植が必要になるようです。

こうした顔面移植は、事故などで外傷を負ってしまった場合や、神経線維腫症などの疾患による美容面の改善、悪性黒色腫などの腫瘍切除後にその部分を補填する、などに対して行われるようです。

顔面移植手術の問題点としては、心理的な面でも存在します。
手術を受けたディノワールさんは、「この顔は、私じゃない」とインタビューに答えていたそうです。移植前後の顔はまったく違うと述べ、複雑な胸の内をのぞかせていました。

一般的な移植と同様に、拒絶反応や術後の感染症のような問題は存在します。術後は、免疫抑制剤を服用する必要があるでしょう。さらに、顔面移植となると、術前・術後の顔の様子はかなり感じが異なると思われます。そうしたアイデンティティーに関する精神的な問題もディノワールさんの場合同様、生じてくるようです。

ですが、次第に慣れてくることもあってか、現在では元の生活に戻りつつあるようです。また、メイクもそれに一役を買っているように思います。たとえば、かずきれいこさんが、「先天性疾患、事故や障害さらに老いといったものも含め、顔と心に傷を負った人々に、人生を前向きに生きる勇気を与えるメソッド」としてのメイクの役割について提言しているようです。

「顔と心と身体は密接につながっている」という考えもあり、やはり機能も大事ですが、外見も重要なQOLの一因となっていると思われます。今後、こうした移植手術が広まり、生活を改善できることができれば、と期待されます。

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