以下は、読売新聞の医療相談室で取り上げられていた内容です。

相談者の方(58歳女性)が、以下のようなことで悩んでいらっしゃるようです。
数年前から両方の眼球が痛むようになりました。月1回ほど頭痛と一緒に起こります。たいていは1、2日で治まりますが、数週間続くこともあり心配です。原因はなんでしょうか。

この相談に対して、間中病院院長である間中信也先生が説明なさっています。
眼球の痛みは、大きく二つの原因が考えられます。

1)目やその周囲の病気から来る場合
緑内障や目の炎症、ドライアイや屈折異常、眼精疲労で痛みが起こることがあります。副鼻腔の炎症や脳腫瘍、脳動脈瘤、ヘルペスによる三叉神経痛で起こることもあります。
2)頭痛に伴って起こる場合
頭痛といっても、片頭痛、群発頭痛、緊張型頭痛という三つの種類があり、治療法が異なるので、どの頭痛かを見極めるのが重要です。

まず緑内障について説明いたします。緑内障では、初期では自覚症状がありません。正常眼圧緑内障を含む開放隅角緑内障や、慢性の閉塞隅角緑内障では視神経が徐々におかされて視野障害が進んでいきます。通常、視野の異常が発見されるときは、神経線維の半分ほどが消失している段階といわれ、かなり進行してから気づきます。ですから、眼圧検査や眼底検査、視野検査による定期的な検査が重要であるといわれているわけです。

ですが、急性の閉塞隅角緑内障が起きると、突然の強い目の痛みに襲われ、目の充血・かすみなどとともに、強い頭痛や嘔吐までもが起きることがあります。治療としては、薬物療法で眼圧を下げたり、レーザー虹彩切開術などのレーザー治療、外科治療などが行われます。

上記の症状とは相談者の方の様子とは異なり、緑内障の可能性は比較的低いのではないでしょうか。
 
次に、ドライアイや屈折異常、眼精疲労でも眼痛が起こることがあります。また、その結果、頭痛が生じることもあります。ドライアイ(結膜・角膜乾燥症)では、目の中がゴロゴロするといった症状もみられます。眼精疲労の一般的症状としては、目の痛み、目の乾き、目のかすみ、充血、視力変化、まぶたの不快感やけいれん、肩こり、頭痛などがあります。もちろん、こうした症状に対しては、目を休ませることが重要ですが、場合によっては、マッサージ、ホットパック、点眼なども効果的であるといわれています。

副鼻腔の炎症や脳腫瘍、脳動脈瘤、ヘルペスによる神経痛などでも眼痛が起こることはあります。副鼻腔炎とは、炎症が副鼻腔(鼻の周囲の骨で囲まれて空洞になっているところ)に生じるもので、発熱や膿性の鼻汁を認め、下を向くと頭痛がひどくなるといった特徴があります。他にも、鼻づまり、頭痛、頬の痛み、眼痛、膿性鼻漏などの症状がみられることがあります。

三叉神経痛は片側顔面の刺されるような、焼けるような痛みがみられます。特に、痛みは眼窩または球後(目の奥)にみられます。洗顔や歯みがきで、痛みが誘発されることがあります。

こうしたものも考えられますが、恐らく可能性の高そうな片頭痛に関して、間中先生は以下のように答えられています。
片頭痛は頭の血管の拡張と炎症による発作性の頭痛で、繰り返し起こります。こめかみの部分が痛むことが多いですが、目の奥から始まることがあります。群発頭痛は片方の目が激しく痛むのが特徴で、群発地震のようにある期間、連日出現します。緊張型頭痛は首から頭にかけての筋肉の凝りが原因ですが、目の奥の痛みを伴うことがあります。

片頭痛なら、トリプタン系薬剤が勧められます。ただし片頭痛で眼痛が数週間続くことはまれです。ご相談者の場合は、緊張型頭痛の要素も入っているのかもしれません。この場合は筋弛緩薬、鎮痛薬などで治療します。ただし頭痛に漫然と鎮痛薬を服用するとかえって頭痛が悪化したり、治りにくくなったりすることがあります。

片頭痛の場合、「ズキンズキン」「グワーングワーン」という拍動するような痛みが特徴的です。他にも、前兆を伴う片頭痛では閃輝暗点・光視症・光過敏など、「目の前がキラキラと光る。ぼやける」といった症状の後に、頭痛が襲ってくることがあるようです。一方、緊張型頭痛の場合は、「ギュー」「ジワーン」という締め付けるような痛みがみられやすいと言われています。

こうした鑑別をふまえた上で、間中先生は「このように眼痛の原因は複雑です。まずは、念のため眼科を受診し、目やその周囲に異常がないかを確かめた上で、頭痛に詳しい医師を受診することを勧めます」とまとめています。たしかに、上記の相談者の内容だけでは、どのような原因があるのか、絞り込むのは難しいと思われます。

同様なことを悩まれている方も、しっかりと「どんな症状で、どの辺りに痛みが強いのか、いつ頃にその痛みはあるのか(脳腫瘍では、朝方に頭痛morning headacheが起こるということが言われています。)、持続時間はどのくらいか、慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿)の既往はあるのか」といったことをまとめてから、受診されてはいかがでしょうか。

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