異常行動と副作用の因果関係が疑われるインフルエンザ治療薬タミフルについて、10歳未満の子供にも、多くの異常行動が認められたことが厚生労働省の研究班がまとめた調査結果で分かった。
16日開かれた厚労省の専門家会議で報告された。調査は全医療機関(約15万施設)を対象に昨冬のインフルエンザ患者で飛び降りや駆け出しなど、重度の異常行動を示した症例の報告を求めた。その結果、137件の報告が寄せられ、60%がタミフルを服用していた。
年齢別にみると、マンションからの飛び降りなど、死亡例が相次いだ10代が69人(うちタミフル服用は42人)と最も多く、10歳未満の56人(同37人)が続いた。これとは別に、会議では平成13年2月の発売以来、異常行動を起こした282症例の追加調査の結果も報告され、34%が10歳未満の患者だった。さらに今シーズン、タミフル服用後に3人が異常行動を示したことも報告され、うち2人は10歳未満だった。
厚労省は今年3月、「因果関係は不明」としながらも緊急安全性情報を出して10代へ原則として処方を中止させた。10歳未満の患者は少なくとも2日間、保護者が目を離さないよう呼びかけているが、処方は可能となっている。厚労省は10歳未満について「このデータを持って何かをする意識はない」(医薬食品局)としている。
会議後、会見した内山真・日大医学部教授は「タミフルが直接、脳に何かを起こす可能性は少ないが、異常行動のリスクを高める因果関係はグレーで調査が必要」と結論づけたが、「服用の有無を問わず、インフルエンザになると異常行動が出る可能性を理解してほしい」と話した。
(タミフル 10歳未満でも高い割合で異常行動)
タミフルは、ノイラミニダーゼ阻害薬の一種です。ノイラミニダーゼ(インフルエンザウイルスの増殖過程において、感染細胞からのインフルエンザウイルスの脱殻に必要な酵素)を阻害することにより、インフルエンザウイルスが感染細胞表面から遊離することを阻害し、他の細胞への感染・増殖を抑制します。ノイラミニダーゼ阻害薬は、吸入剤としてリレンザが他にありましたが、シェアは3%にまで落ち込み、タミフルがシェアのほとんどを占めている現状になっています。
タミフルと異常行動の関係性については、未だに決着がついていません。ラットの脳細胞を興奮させる作用があることを、米ワシントン大学の和泉幸俊教授らがラットを使った実験で示したことや、厚生労働省の作業部会によって「異常行動と関連づけられるデータは今のところない」とする中間結果を発表したことなど、さまざまな意見があります。
一方、タミフルとの関連性を支持する意見の一つとしては、未熟な子供は血液脳関門におけるP糖蛋白の発現が乏しく、タミフルが通過してしまうのではないか、という説もあります(実験的に証明したわけではないようですが)。
また、厚生労働省研究班によれば、以下のような「タミフル犯人説」が疑わしい者であるという結果が出ています。
16日開かれた厚労省の専門家会議で報告された。調査は全医療機関(約15万施設)を対象に昨冬のインフルエンザ患者で飛び降りや駆け出しなど、重度の異常行動を示した症例の報告を求めた。その結果、137件の報告が寄せられ、60%がタミフルを服用していた。
年齢別にみると、マンションからの飛び降りなど、死亡例が相次いだ10代が69人(うちタミフル服用は42人)と最も多く、10歳未満の56人(同37人)が続いた。これとは別に、会議では平成13年2月の発売以来、異常行動を起こした282症例の追加調査の結果も報告され、34%が10歳未満の患者だった。さらに今シーズン、タミフル服用後に3人が異常行動を示したことも報告され、うち2人は10歳未満だった。
厚労省は今年3月、「因果関係は不明」としながらも緊急安全性情報を出して10代へ原則として処方を中止させた。10歳未満の患者は少なくとも2日間、保護者が目を離さないよう呼びかけているが、処方は可能となっている。厚労省は10歳未満について「このデータを持って何かをする意識はない」(医薬食品局)としている。
会議後、会見した内山真・日大医学部教授は「タミフルが直接、脳に何かを起こす可能性は少ないが、異常行動のリスクを高める因果関係はグレーで調査が必要」と結論づけたが、「服用の有無を問わず、インフルエンザになると異常行動が出る可能性を理解してほしい」と話した。
(タミフル 10歳未満でも高い割合で異常行動)
タミフルは、ノイラミニダーゼ阻害薬の一種です。ノイラミニダーゼ(インフルエンザウイルスの増殖過程において、感染細胞からのインフルエンザウイルスの脱殻に必要な酵素)を阻害することにより、インフルエンザウイルスが感染細胞表面から遊離することを阻害し、他の細胞への感染・増殖を抑制します。ノイラミニダーゼ阻害薬は、吸入剤としてリレンザが他にありましたが、シェアは3%にまで落ち込み、タミフルがシェアのほとんどを占めている現状になっています。
タミフルと異常行動の関係性については、未だに決着がついていません。ラットの脳細胞を興奮させる作用があることを、米ワシントン大学の和泉幸俊教授らがラットを使った実験で示したことや、厚生労働省の作業部会によって「異常行動と関連づけられるデータは今のところない」とする中間結果を発表したことなど、さまざまな意見があります。
一方、タミフルとの関連性を支持する意見の一つとしては、未熟な子供は血液脳関門におけるP糖蛋白の発現が乏しく、タミフルが通過してしまうのではないか、という説もあります(実験的に証明したわけではないようですが)。
また、厚生労働省研究班によれば、以下のような「タミフル犯人説」が疑わしい者であるという結果が出ています。
飛び降りなど重度の異常行動を起こしたインフルエンザ患者は、2006年〜2007年にかけての流行シーズンに137人いたが、治療薬タミフルを服用していたのは60%で、38%は服用していなかったとするデータが出ています。
このことを受けて、作業部会メンバーの内山真日本大教授は記者会見で「インフルエンザで異常行動が起こりうることが分かった。薬が直接何かを起こしているという可能性は小さいことを示唆するデータ」と述べています。さらに、タミフルの10代への処方中止をした後も異常行動は減ったとは言えない、と分析しています。この結果を考えると、インフルエンザ脳炎・脳症のリスクの方が考えられるのではないか、と推定されます。
ですが、一方で研究をする上で、過去にさかのぼっての調査のため、バイアス(偏り)が生じている可能性があるとも指摘しています。異常行動の発症率の推定、タミフル服用の有無別の比較は難しいため、やはり結果はグレーと言わざるを得ないでしょう。
現在、10代は体格などによるが、異常行動を静止することが難しいことがあり、タミフルの使用を控え、10代未満ではインフルエンザでの死亡率が高く、静止も容易であるということで使用可能、としています。10代には、同じノイラミニダーゼ阻害薬であるリレンザを処方し、それ以外はリレンザかタミフルか選んでもらう、ということになるのではないでしょうか。
今年は、10月下旬に全国の定点医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は、1施設当たり0.2人と、この時期としては過去10年で最多だったことが国立感染症研究所のまとめで分かっています。流行るのが早いということもあり、早急の対策やガイドライン策定の取りまとめなどが望まれます。
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今年のインフルエンザワクチンの供給量は十分?
このことを受けて、作業部会メンバーの内山真日本大教授は記者会見で「インフルエンザで異常行動が起こりうることが分かった。薬が直接何かを起こしているという可能性は小さいことを示唆するデータ」と述べています。さらに、タミフルの10代への処方中止をした後も異常行動は減ったとは言えない、と分析しています。この結果を考えると、インフルエンザ脳炎・脳症のリスクの方が考えられるのではないか、と推定されます。
ですが、一方で研究をする上で、過去にさかのぼっての調査のため、バイアス(偏り)が生じている可能性があるとも指摘しています。異常行動の発症率の推定、タミフル服用の有無別の比較は難しいため、やはり結果はグレーと言わざるを得ないでしょう。
現在、10代は体格などによるが、異常行動を静止することが難しいことがあり、タミフルの使用を控え、10代未満ではインフルエンザでの死亡率が高く、静止も容易であるということで使用可能、としています。10代には、同じノイラミニダーゼ阻害薬であるリレンザを処方し、それ以外はリレンザかタミフルか選んでもらう、ということになるのではないでしょうか。
今年は、10月下旬に全国の定点医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は、1施設当たり0.2人と、この時期としては過去10年で最多だったことが国立感染症研究所のまとめで分かっています。流行るのが早いということもあり、早急の対策やガイドライン策定の取りまとめなどが望まれます。
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