京都大の山中伸弥教授が作製に成功した万能細胞「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」について渡海紀三朗文部科学相は22日、今後5年間で100億円超の研究費を投入する方針を明らかにした。研究者の連携のための組織(コンソーシアム)をつくるなどとする文科省の総合戦略にもこの方針が明記された。
この日の平成20年度予算案の閣僚折衝で、研究推進のため文科省が求めていた10億円の追加が認められ、20年度予算案の総額が22億円になることが固まった。19年度の同細胞研究関連予算は計約2億7000万円で、約8倍の増となる。
世界的に研究競争が激化する中、日本発の革新的な技術を育て、再生医療への応用などで世界をリードし続けるために、緊急的な財政措置が必要と判断した。22億円は、山中教授を中心としたiPS細胞の研究態勢の強化、再生医療実現に向けて同細胞を使った治療や細胞の操作技術の開発を支援するための予算。
既にこれらとは別に、研究拠点の「iPS細胞センター」が置かれる京都大の「物質−細胞統合システム拠点」の研究環境整備のために14億円が計上されている。
渡海文科相は記者会見で「オールジャパン態勢を整え、今後この研究が世界の人々の病気治療につながるよう頑張りたい」と述べた。iPS細胞は、受精卵の破壊などの倫理的な問題を引き起こすことなく、拒絶反応のない臓器づくりなどに応用できることが期待されている。
(万能細胞研究に5年で100億円投入 文科相表明)
人工多能性幹細胞(iPS細胞induced pluripotent stem cell、Induction of Pluripotent Stem Cells)とは、心筋細胞や神経細胞など様々な細胞に分化する能力を持つ万能幹細胞のことを指します。
胚性幹細胞(ES細胞)に似た性質を持りますが、患者自身の細胞組織から遺伝子を抽出することによってiPS細胞を生成し、患者と同じ遺伝子を持つ臓器が再生できることができ、胚性幹細胞による方法では問題があった拒絶反応のない移植医療が実現すると期待されます。他にも、受精卵から作成するES細胞につきまとう倫理的な問題を回避できる意義は大きく、再生医学の研究は一気に加速すると期待されます。
研究の流れとしては、まず2006年8月に山中伸弥・京都大学教授と高橋和利らのグループが、四つの遺伝子(KLF4,c-Myc,Oct3/4,Sox2)をレトロウイルスに運ばせて体細胞に導入する手法でマウスの線維芽細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)作成を発表していました(この時点で、最終的にiPS細胞を樹立するには4遺伝子で十分であることを突き止めています)。
2007年2月には、Oct-4・Sox2・Klf4・c-Mycの4因子を導入してiPS細胞を樹立した所、ES細胞とほぼ見分けのつかない分化万能性を持ったiPS細胞の樹立に成功したと発表しています。
Oct-4・Sox2・Klf4・c-Mycを用いて、36歳女性の顔の皮膚から単離された線維芽細胞、69歳男性の線維芽様滑膜細胞、および新生児包皮由来の線維芽細胞から、それぞれヒトiPS細胞の樹立に成功したそうです。
ただ、最大の課題は安全性の確保であるといわれ、万能細胞は作成過程でがんに関係する遺伝子やウイルスを使っているため、現状では、発がんの危険性により臨床応用は難しいと言われていました。
ですが、山中伸弥教授らの研究グループは12月には、作製法を改良し、より安全なiPS細胞を得ることに成功したと発表しています。当初必要とされた遺伝子c-Myc(がん誘発)を除いた三つの遺伝子(Oct-4・Sox2・Klf4の3因子)を導入して、マウスとヒトそれぞれの皮膚細胞で高品質の人工多能性幹細胞(iPS細胞)を(効率は悪いが)作ることに成功したと発表しています。
ちなみに、幹細胞とは以下のような性質があります。
この日の平成20年度予算案の閣僚折衝で、研究推進のため文科省が求めていた10億円の追加が認められ、20年度予算案の総額が22億円になることが固まった。19年度の同細胞研究関連予算は計約2億7000万円で、約8倍の増となる。
世界的に研究競争が激化する中、日本発の革新的な技術を育て、再生医療への応用などで世界をリードし続けるために、緊急的な財政措置が必要と判断した。22億円は、山中教授を中心としたiPS細胞の研究態勢の強化、再生医療実現に向けて同細胞を使った治療や細胞の操作技術の開発を支援するための予算。
既にこれらとは別に、研究拠点の「iPS細胞センター」が置かれる京都大の「物質−細胞統合システム拠点」の研究環境整備のために14億円が計上されている。
渡海文科相は記者会見で「オールジャパン態勢を整え、今後この研究が世界の人々の病気治療につながるよう頑張りたい」と述べた。iPS細胞は、受精卵の破壊などの倫理的な問題を引き起こすことなく、拒絶反応のない臓器づくりなどに応用できることが期待されている。
(万能細胞研究に5年で100億円投入 文科相表明)
人工多能性幹細胞(iPS細胞induced pluripotent stem cell、Induction of Pluripotent Stem Cells)とは、心筋細胞や神経細胞など様々な細胞に分化する能力を持つ万能幹細胞のことを指します。
胚性幹細胞(ES細胞)に似た性質を持りますが、患者自身の細胞組織から遺伝子を抽出することによってiPS細胞を生成し、患者と同じ遺伝子を持つ臓器が再生できることができ、胚性幹細胞による方法では問題があった拒絶反応のない移植医療が実現すると期待されます。他にも、受精卵から作成するES細胞につきまとう倫理的な問題を回避できる意義は大きく、再生医学の研究は一気に加速すると期待されます。
研究の流れとしては、まず2006年8月に山中伸弥・京都大学教授と高橋和利らのグループが、四つの遺伝子(KLF4,c-Myc,Oct3/4,Sox2)をレトロウイルスに運ばせて体細胞に導入する手法でマウスの線維芽細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)作成を発表していました(この時点で、最終的にiPS細胞を樹立するには4遺伝子で十分であることを突き止めています)。
2007年2月には、Oct-4・Sox2・Klf4・c-Mycの4因子を導入してiPS細胞を樹立した所、ES細胞とほぼ見分けのつかない分化万能性を持ったiPS細胞の樹立に成功したと発表しています。
Oct-4・Sox2・Klf4・c-Mycを用いて、36歳女性の顔の皮膚から単離された線維芽細胞、69歳男性の線維芽様滑膜細胞、および新生児包皮由来の線維芽細胞から、それぞれヒトiPS細胞の樹立に成功したそうです。
ただ、最大の課題は安全性の確保であるといわれ、万能細胞は作成過程でがんに関係する遺伝子やウイルスを使っているため、現状では、発がんの危険性により臨床応用は難しいと言われていました。
ですが、山中伸弥教授らの研究グループは12月には、作製法を改良し、より安全なiPS細胞を得ることに成功したと発表しています。当初必要とされた遺伝子c-Myc(がん誘発)を除いた三つの遺伝子(Oct-4・Sox2・Klf4の3因子)を導入して、マウスとヒトそれぞれの皮膚細胞で高品質の人工多能性幹細胞(iPS細胞)を(効率は悪いが)作ることに成功したと発表しています。
ちなみに、幹細胞とは以下のような性質があります。
幹細胞とは、細胞分裂を経ても、同じ分化能を維持する細胞のことです。発生における細胞系譜の幹 (stem) になることから「幹細胞」と名付けられています。
大きな特徴としては、幹細胞から生じた二つの娘細胞のうち、一方は別の種類の細胞に分化しますが、他方は再び同じ分化能を維持しています。この点で、他の細胞と異なっており、発生の過程や、組織・器官の維持において細胞を供給する役割を担っています。
また、幹細胞ではテロメラーゼが発現しているため、テロメア(細胞分裂の度に短くなり、いわば細胞の寿命を担っています)の長さが維持されている点も大きな特徴です。この幹細胞の性質が維持できなくなると、新たな細胞が供給されなくなり、早老症や不妊などの原因となります。
iPS細胞では、さらにES細胞に似た分化万能性をもっているといわれています。分化万能性を持った細胞は理論上、体を構成するすべての組織や臓器に分化誘導することが可能であり、ヒトの患者自身からiPS細胞を樹立する技術が確立されれば、免疫拒絶の無い移植用組織や臓器の作製が可能になると期待されています。さらに、受精卵やES細胞をまったく使用せずに分化万能細胞を単離培養できるため、倫理的な問題を避けることができると考えられます。
今後、さらなる再生医療分野での革新がみられると思われます。臓器移植の慢性的なドナー不足や拒絶反応に悩まされることがなくなり、重要な研究になっていくと思われます。
【関連記事】
再生医療とは(切断した中指の再生)
1つの幹細胞から心臓を造り出す技術開発に成功−イギリス
大きな特徴としては、幹細胞から生じた二つの娘細胞のうち、一方は別の種類の細胞に分化しますが、他方は再び同じ分化能を維持しています。この点で、他の細胞と異なっており、発生の過程や、組織・器官の維持において細胞を供給する役割を担っています。
また、幹細胞ではテロメラーゼが発現しているため、テロメア(細胞分裂の度に短くなり、いわば細胞の寿命を担っています)の長さが維持されている点も大きな特徴です。この幹細胞の性質が維持できなくなると、新たな細胞が供給されなくなり、早老症や不妊などの原因となります。
iPS細胞では、さらにES細胞に似た分化万能性をもっているといわれています。分化万能性を持った細胞は理論上、体を構成するすべての組織や臓器に分化誘導することが可能であり、ヒトの患者自身からiPS細胞を樹立する技術が確立されれば、免疫拒絶の無い移植用組織や臓器の作製が可能になると期待されています。さらに、受精卵やES細胞をまったく使用せずに分化万能細胞を単離培養できるため、倫理的な問題を避けることができると考えられます。
今後、さらなる再生医療分野での革新がみられると思われます。臓器移植の慢性的なドナー不足や拒絶反応に悩まされることがなくなり、重要な研究になっていくと思われます。
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